臨機応変に対応するのが苦手なASD特性の子
あるお子さんには、「毎朝7時からのニュース番組を見ながら、目玉焼きとトーストの朝食を食べる」というルールがあり、それが1分でもずれたり、メニューが少しでもちがったりすると、パニックになってしまうそうです。
はじめて行く場所や、いつもとちがう道を通るなどのささいな変化でも、固まってしまって動けなくなる子や泣き叫ぶ子もいます。
ほかの子にとっては、単にいつもとはちがう公園に行くだけのことでも、こだわりの強い子どもにとっては「まったくちがう世界」に足を踏み入れるような感覚なのかもしれません。
不安や恐怖を感じたときにとる行動も、その子によってさまざまです。
「こわいと言って泣きわめく」「その場に固まって動けなくなる」「癇癪やパニックを起こしてしまう」、ひどい場合にはさらにエスカレートして「自傷行為をしてしまう」などもあります。
外の世界では自分が知らない新しい刺激が次々と入ってくるので、それが大きなストレスになることもあります。
変化に対する不安が強く、臨機応変に対応することが苦手なため、自分の家のようによく知っている場所がいちばん安心できると感じる子も多いです。
このような傾向は、ASDが「自閉」という言葉で表現されるゆえんのひとつかもしれません。
ルールを遵守するのは変化への不安が強いせい
ASDの特性を持つ人のなかには、「ルールを守らないといけない」という気持ちが強い人も多く、マニュアルやルールが明確に定められている仕事が向いている人もいます。
じつは、わが家の長女も交通ルールにはとても厳格で、まるで私の指導係のような存在になっています。
たとえば、私が車を運転しているときに黄色の信号で止まれずに通過すると、「今、黄色だったよ。信号無視になっちゃうからダメ!」と鋭く指摘されます。
また、赤信号で私がよそ見をしていると、「はい、青になったから出発」とタイミングを教えてくれるなど、私の運転をいつも厳しく見守ってくれていて、とても助かっています。
なぜ、ASDの特性を持つ人がルールやマニュアルを遵守する傾向が強いかと言えば、やはり「変化に対する不安が強い」ということだと思います。
私たちの日常生活では、基本的には決められたルールを守っているものの、ときには、まわりの人の様子を見ながら行動することを求められる場面もありますよね。
その場その場で、自分の行動や対応をまわりに合わせられる子もいますが、ASDの特性を持つ子は、まわりの状況を見て行動することが苦手です。
まわりの状況が変わるたびに、それに応じて臨機応変に自分の対応を変えることが難しく、不安になったりパニックの原因になることもあります。
「その場の空気を見て、臨機応変に動くこと」が苦手だからこそ、ASDの人は社会のなかで生きづらいのですね。

