自分が成長できる企業の見分け方

先ほど、「新卒時にまずは大企業か優良な中小企業に入るべき」と述べたが、どんな企業でもよいというわけではない。社外でも通用する力を高めてくれるところもあれば、そうでないところもある。ひとつは、グローバル経験が積める企業がお勧めだ。

大手でありながら、終身雇用・年功序列の意識が薄いところも狙い目だ。たとえばリクルートである。社内における人材の価値が社外における価値ときわめて近い。だから、社内で評価されれば、社外に出ても通用するというメリットが享受できる。

ピンキリだが、ベンチャーもおもしろい。トップが大手企業の正社員出身で、従業員が100人以内のところがお勧めだ。そういう職歴の人がトップにいると、同じベンチャーでも、ハイリスク・ハイリターンの色彩が弱まり、日本の大企業特有のローリスク・ミドルリターンの色彩が強くなるのだ。しかもベンチャーだから、ルーティン・ワークより付加価値をつけられる仕事が多く、仕事を通じて鍛えられる。少し前の楽天が典型だった。

そうやって肩肘張って頑張らなくても、いまいる企業で成果を出すという手ももちろんある。ただ、その道も険しいものとならざるをえない。

リーマン・ショック後の雇用状況の変化は想像以上に早く、ダイナミックである。10年10月1日時点での大学生の就職内定率は史上最低の57.6%しかなかった。しかも外国人採用や海外での採用はどんどん増えている。こうした事実は日本型雇用がすでに終わりつつあることを示している。

さらに、1990年代は50代前半だった賃金カーブの頂点が、いまでは40代前半まで下りてきたという現実に目を向ける必要がある。賃金だけではない。幹部選抜の時期も早期化し、35歳でその後の会社人生が見通せてしまう。

3割は課長以上になれるが、あとの7割はずっとヒラのままという時代だ。だから、30代後半から40代前半で選抜に漏れた人は「仕事で偉くなる」という価値観は捨て、それ以外の楽しみを見つけなければならなくなる。だからこそ、大企業の正社員として十分やっていける人もそこから漏れてしまう人も、出来高払いの世界での自分の価値を、早く考え始めたほうがいい。

いまいる会社が明日も存在するということは夢物語にすぎない。そう考えると、若いうちから社外で通用する力を伸ばしておくしかないだろう。

※すべて雑誌掲載当時

Joe's Labo代表取締役 城 繁幸(じょう・しげゆき)
1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年、同社を退社し、人事コンサルティング会社を設立。『若者はなぜ3年で辞めるのか?』をはじめ、働き方や人事制度に関する著書が多数。
(荻野進介=構成 向井 渉=撮影)
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