経営コンサルタント
小宮一慶

小宮コンサルタンツ代表。1957年、大阪府生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』など著書多数。

そして、マクロ経済を解き明かす最良の材料が月曜朝刊の「景気指標」です。数多くの指標が一面にコンパクトに掲載されていて、その選択と配列は実によく考えられています。足りない項目は、日本の貯蓄率ぐらいです。

ただし景気指標の数字を、日々のニュースやイベントと関連づけられなければ、面白くありません。具体例として、「なぜデフレは日本経済にマイナスなのか」について読み解いてみましょう。

まず前提として、日本銀行は「消費者物価指数の1%上昇」というデフレ脱却の目標を定めていることを知っておいてください。そのうえで、景気指標を見ると、「消費者物価指数」は確かに継続的に下落を続けていますから、日本はデフレの状態にあるといえます。ただしデフレは「悪いデフレ」と「よいデフレ」の2つに分けられます。

「輸入物価指数」を見てください。輸入物価が高くなれば、企業の仕入れ値が上がるため、商品の値段は高くなるはずです。しかしデフレで、商品の値段は下がっています。つまり企業の利ざやが減っている。そのままでは「悪いデフレ」です。

この輸入物価は2011年夏まで非常に高い数字でしたが、11月ごろから落ち着いています。最終商品の値段さえ下がらなければ、企業は利ざやの拡大が見込めるので、「よいデフレ」です。日銀の思惑通りに消費者物価指数が上がれば、利ざやを稼げた企業の設備投資が活発になりますから景気拡大に弾みがつく可能性があります。

次の検討課題は、物価指数の上昇が1%で止まるか、ということです。海外の数字を見てみましょう。アメリカの消費者物価は前年比2.9%、ユーロ圏全体で2.7%、イギリスは3.4%です。日本と違い、世界は総じてインフレ傾向にあることがわかります。アメリカの目標の2%は「3%から下げたい」ということであり、日本は逆に、「マイナスを1%に上げたい」という意味なのです。