先読みに役立つのは「載らない記事」

このように、ニュースや指標同士を関連づけて物事を考えていくと、世の中の動きが非常によくわかります。ポイントは「全体を見る努力」です。自分に関心のある事象やデータだけを見ていても、物事のつながりに気づきません。経済はすべてつながっています。そこが面白いのです。

さらに大切なのは、紙面に出てくる数字に関心をもち、日々メモしておくこと。たとえば名目GDPが給料の源泉になることを理解したら、その動向にもっと関心が湧くでしょう。さらに、日本の現在の数字が1991年度とほぼ同じだとわかれば、「失われた20年」という言葉の真実味が胸に迫ってくるはずです。

個々の数字に関心が向くと仮説が立てられるようになります。日本の消費者物価は下がっているけれど、海外は上がっているのではないか。その程度の仮説で最初は十分。それがあれば、日銀のいう「1%」の意味がわかります。

さらには、最近の日経に載っていない記事は何か、を考えて読むことをお勧めしたい。たとえば、最近は日本企業の海外進出、つまり対外投資の記事が多く、海外からの対日投資という記事がほとんどなかったのです。ここにきて、台湾のEMS企業がシャープの株を10%獲得したという記事が載りました。震災以降、外国企業による日本企業への初めての大型投資ですが、それに続く日本進出企業が増加するかが焦点です。見かけない記事にも注意がいるのです。

日経を毎日一面から、1週間のリズムをつけて読んでいく。重要な数字はメモし、仮説を立て、その正否を検証してみる。これを半年から1年、地道に繰り返していくと、あなたもマクロ経済分析の相当のプロになれます。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=荻野進介 撮影=市来朋久)
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