私がみる今後の「自動車業界の未来」

2018年の数字になりますが、世界市場において自動車の販売台数は9582万台、インドのそれは338万台です。

人々で込み合うデリーの風景
写真=iStock.com/urbancow
※写真はイメージです

当社は2015年に、今後のインドにおけるマーケットを推計したことがあります。2005年から2015年を振り返ってみると毎年、7.9パーセント成長していました。その延長線上で考えると、インドの自動車マーケットは2030年に1000万台になる。すると、現在と同様シェア50パーセントを維持するためには、スズキは500万台になっていなくてはいけない。  

グルチャラン・ダス、野地秩嘉『日本人とインド人』(プレジデント社)
グルチャラン・ダス、野地秩嘉『日本人とインド人』(プレジデント社)

ただ、2018年、2019年はやや経済成長が鈍化しましたし、今年(2020年)は新型コロナウイルスの影響もあります。2030年の推計数字を下方修正する必要があるでしょう。それでもインド経済が成長していくことは間違いありません。世界でもっとも成長するマーケットです。

さて、当社はトヨタと提携してこれからの時代を乗り切っていくことにしました。うちは中小企業ですから、これまで、ひたすら車を売ることに専念して、幅広く物事を考える余裕がなかった。身の丈に合った車を売ってきただけです。

ところが、これからはハイブリッド、電気自動車、コネクティッド、自動運転といろいろなことを考えて車を造らなければならない。そうすると、うちだけではすべてはできませんから、トヨタと提携して指導を仰いでやっていかなくてはならないのです。

トヨタと提携し、お互いに切磋琢磨

ただし、なんでもかんでも「教えてください、先生」と卑屈になってはいけません。

スズキが持っているもので、かつ、トヨタが持っていないものを通じてトヨタに貢献する。教わるだけの生徒という立場であってはならない。「なんでも教えてください」という根性ではダメ。お互いに切磋琢磨して、1パーセントでいいから、0.1パーセントでもいいから貢献できるように努力をしたい。

インドではスズキとトヨタで協力して、小さな車はスズキが提供する。スズキは2019年の6月からトヨタに少数ながら提供しています。そして、大きな車はトヨタから提供していただいてスズキブランドで売る、といった取り組みがぼちぼち始まっています。

鈴木 修(すずき・おさむ)
スズキ会長
1930年生まれ。中央大学法学部卒。中央相互銀行を経て、58年鈴木自動車工業入社。67年常務、73年専務を経て、78年社長。2000年会長就任。
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