ベンチャーとファミリー企業の共通点

ファミリービジネスのような経営形態は、AI(人工知能)が発達するこれからの時代においても、力を発揮しやすいと考えています。

AIの発達によって、AIに仕事や職業を奪われるという議論がありますが、そんなことはありません。1つの仕事や職業の中で、AIが人間よりも得意な領域の業務のみが、人間からAIに代替されることになります。その結果、例えば、今まで100人で行っていた業務が、10人+AIでできるようになる、といったことが起こります。同じ事業を、より少ない人数でできるようになるということです。

あらゆる面でこのようなことが起こると、企業は大人数の組織である必要はなくなり、少人数でもビジネスを大規模に展開できるようになります。また、急激な環境変化に対応していくには、小回りの利く組織のほうが有利です。トップがリーダーシップを発揮し、迅速な意思決定をしながら組織を引っ張っていくことが求められます。ビジネスの正解を予想することが難しい中で、トップはリスクを取りながら、自らの信念に基づき、トライ&エラーを繰り返しながら柔軟に事業を進めていく時代になるでしょう。

ファミリー企業は強いリーダーシップを発揮しやすい

社内融和型のトップが多い日本企業の中で、こうしたリーダーシップを比較的発揮しているのがファミリー企業です。強いリーダーシップを発揮しやすいファミリー企業のような組織は、今後ますます重要になるのではないかと思います。ベンチャー企業が成功できるのも、所有と経営が一致しているファミリー企業の特性を持っているからだと言えます。

人を数多く抱えている企業も、今後はファミリー企業のような組織運営を目指すべきでしょう。AIによって100人必要としていた事業が10人でできるようになった場合は、組織を組み替えて、10人ずつの組織を10つくります。そして、各組織にリーダーシップを発揮させて、それぞれの信じる方向にチャレンジさせるのです。このように、大きな組織を小さな組織の集合体にしていくことが、これからの時代に大企業が生き残るためのポイントと言えます。

先行きが見通しにくいこれからの時代こそ、ファミリー企業の持つ可能性に、改めて注目すべきだと思います。

(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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