仕事をしながら勉強を続けるのは難しい。仕事に時間を取られて計画通りに進まないこともある。東京大学教授の柳川範之さんは「大人の勉強は長距離走だ。ときどき立ち止まってもいいし、しばらく休んでもいい。そのくらい気楽に構えることが長続きの秘訣だと思う」という――。

※本稿は、柳川範之『東大教授がゆるっと教える独学リスキリング入門』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

ビジネスマンおよび本
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

とりあえず本屋に行って、入門書を3冊買ってくる

独学をめざす皆さんにオススメしたいのは、「とりあえず本屋に行って、なんとなく関心の持てる分野の本を手に取ってみる。そして、『ちょっと勉強してもいい分野かな』と思ったら、入門書を3冊買ってくることから始める」という方法です。

自分が勉強したほうがいい分野や勉強すべき課題、自分に向いていることは、そう簡単に見つかるものではありません。これはもう、「なかなか見つからない」と割り切るしかありません。そして、ある程度学んでみて、「これはダメだな」と思ったらさっさとあきらめて、また別の分野を探す。そのくり返しをして、自分に向いている分野を見つければよいのです。

試行錯誤するのを避けて、初めから確実な1個を探そうとすると、かえって何も見つけられないのだと思います。

「せっかくお金を出して買ったのに、あきらめてはもったいない」面も確かにあります。しかし、本はすでに買ってしまった以上、それを勉強してもしなくても、払ったお金は返ってきません。買ったという過去の事実に縛られて、これからの時間を無駄に使うよりは、試行錯誤のための投資だったと割り切って、より有意義な方向にこれからの時間を使ったほうが建設的です。

最初から最後まで律儀に読む必要はない

3冊の本は、簡単に読めて、全体像がある程度つかめるタイプの本を選びましょう。わりと網羅的な、上から地図をおおざっぱに眺めるような印象の本がいいと思います。

ただし1ページ目からきっちり読んで、律義に最後まで読む必要はありません。

「せっかくここまでやったから」とか「こんな中途半端であきらめるなんて、自分が許せない」と感じてしまう人は多いのですが、皆さん、マジメすぎるのだと思います。我々は、「せっかく買って読み始めた本は、おしまいまで読み通すのがいい子どもだ」と言われて育ってきました。小学生に勉強の癖をつける意味ではそれでいいと思いますが、そこも発想を変える必要があります。もっと中途半端でいいのです。本当に向いていないことや身につかないことをいくら勉強しても、無駄を重ねるばかりです。

本というのは、私の専門である経済学の本が典型ですが、最初のほうはつまらないということが往々にしてあります。本当に知りたい面白いことは、最後の20~30ページに書いてあったりします。生まじめに最初から読んでいって、面白いところまで行きつけず挫折したらもったいない話です。まだ、概観の段階ですから、途中を飛ばしても全然かまいません。興味を持てそうな箇所から、パラパラ読めばいいのです。