日本から世界へ展開していくこともイメージしました。「変わり続けることを約束する」というコンセプトは、「A commitment for evolution」と英語に訳していますが、「変なホテル」は「Henn na Hotel」とそのままの表記にしています。「Sushi(寿司)」とかと同じように、日本発の言葉として世界に広めていきたいという想いからです。さらに、「へん」という発音は一般的に「Hen」と表記しますが、ローマ字表記する際にはアルファベットの「n」を2つ当てました。これはキーボードで「ん」を打つときに、日本人は「n」を2回重ねて入力することを表現しています。

「変なホテル」というネーミングは、プロジェクトに関わった中のスタッフにも向けています。もともと、ハウステンボスを運営するHISの澤田秀雄会長以外はみんな、このネーミングに反対していた。ただでさえロボットが全部をまかなうという前例のないホテルなのに、名前まで奇抜にする必要はない、と。要は、世界初のプロジェクトなのに、スタッフがビビッていたんです。だからこの名前にして、やるしかないという方向へスタッフの意識を向けたかった。

ロボットがやっているからと世間で注目してもらえるのは、所詮、オープンから1年程度でしょう。現状のままで、世界に発信していけるとは思えない。たとえば、何時にチェックアウトしたらいいかとロボットに聞いたときに、「うぜぇよ」と返事されるとか、予想を裏切られたほうが印象に残る。注目を浴び続けるためには、変わり続けていくことが必要なんです。

ロボットの活躍で開業以来満室に

2015年7月17日、長崎「ハウステンボス」にオープンした、先進技術を導入した世界初のホテル。フロントから、クローク係、ポーターに至るメーンスタッフすべてをロボットが対応する。1カ月の宿泊者数は5500人、満室が続く。写真のクロークロボットは、500円で荷物を24時間自由に出し入れできる。

 
北川一成(GRAPH代表/ヘッドデザイナー)
1965年、兵庫県生まれ。87年、筑波大学卒業。89年、GRAPH(旧:北川紙器印刷株式会社)入社。過去のテレビ出演にテレビ東京『カンブリア宮殿』、NHK『ビジネス新伝説 ルソンの壺』など。著作に『変わる価値』(ワークスコーポレーション)、関連書籍に『ブランドは根性』(日経BP社)がある。
(構成=金井 悟 撮影=佐藤新也)
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