「そもそも立ち食いそば屋と定食屋では客単価が違うだろう」と思う人がいるかもしれない。では、立ち食いそば屋が400円、定食屋が800円だったとする。おのおの1時間当たりの売上高を計算して比較すると、「150×400=6万円」「45×800=3万6000円」となり、立ち食いそば屋に軍配があがる。この勝因はひとえに回転率のよさにある。
ついでに、このケースをもとに月商を計算してみよう。朝8時から夜8時までの12時間お店を開けて、ウイークデーのみの営業だったとする。暇な時間もあるので、時間当たり売り上げは6万円の半分としても「3万×12×5×4=720万円」。この通りいけば、よい商売だ。
そして、もう一つ立ち食いそば屋の強みがあると私は見ている。それは食材のロス率の低さだ。実は私は公認会計士として独立する際、商売を学びたいと考えてタイ焼き屋を開いたことがある。そこでわかったのは、原材料となる食材を無駄にすることがほとんどなかったことによるメリットだった。
餡子は冷凍しておけば日持ちがするし、玉子もそうそう腐るものではない。それに湿気さえ気を付けておけば、小麦粉がダメになるということもない。だからせっかく仕入れたものを無駄にすることがなく、あとは客足に応じてタイ焼きを焼いていくだけで済んだ。
立ち食いそば屋の食材というと、そばにうどん、てんぷらのネタに使うエビや野菜、それとワカメにネギといったところだろう。生ものを扱う定食屋と違って、どれも日持ちがして、仕入れた食材を無駄にすることが少ないはずだ。
1杯300円、400円という小さな商いのように思える立ち食いそば屋だが、実はその裏側ではきちんと“儲けのシステム”が確立されているのだ。こう見ていくと商売って本当に面白いものだと思う。