聞き手を話に引き込む“共同作業”とは

「スピーチというものは暗唱と違って、聴衆に反応をおこさせることを意図したものであり、聴衆を話という共同事業のパートナーにすることだと認識することである」(*)と『ユーモアのある文章の書き方と話し方』の著者パーシー・H・ホワイト氏が語っているように、たとえば聞き手に「お手伝いをお願いします」と頼んだり、質問を投げかけることで、聞き手をこの話を仕上げるための共同作業者とすることは有効だ。あるいは、メモを取るように促したり、隣の人と話をする場面を作るなど、体の一部を動かすようにすれば聞き手がぼんやりせずに話に耳を傾けるようになっていく。これだけでもずいぶんと話に参加している意識が生まれるだろう。これは少人数に対しても大人数を前にしても同じである。

ポイントは聞き手にちょっとした“心地よいストレス”を与えてやることだ。

「心臓は高鳴り、呼吸は速くなり、汗が噴き出ているかもしれません。でも、こうした早い鼓動や荒い呼吸は、酸素を多く含んだ血液を脳や身体の隅々まで送り込んで、チャレンジに備えているのだと考えることで、身体の反応も変わります」

共同作業者としてのちょっとしたストレスを与えて逆手にとれば、あなた伝えたい内容に耳を傾けてもらい実行してもらうためにも有効に働かせることだってできるだろう。

[参考資料]
TED Kelly McGonigal, How to make stress your friend ,
http://www.ted.com/talks/kelly_mcgonigal_how_to_make_stress_your_friend/transcript
*デール・カーネギー著 『心を動かす話し方』(2006年 ダイヤモンド社)

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