論点を実感させ、話につなぎとめる

話のポイントはおよそこんなものだった。

・「ストレスに害がないと信じる人」は、ストレスで死亡リスクはあがらない

全米での研究によると、ストレスが健康を害すると信じる人が死亡するリスクは高まり、“ストレスは害ではない”と信じる人は、ストレスが高くなっても死亡リスクは高まらない。

・考え方を変えると、体の反応が変わる

ストレスだと感じるような早い鼓動や荒い呼吸は、酸素を多く含んだ血液を脳や身体の隅々まで送り込んで、チャレンジに備えているのだと考えることで、身体の反応も変わる。ストレスを感じると血管が収縮するが、ストレスが身体に害ではないと知っていると、血管は収縮しない。つまり、考え方を変えることで体の反応が変わる。

・ストレスホルモンがもたらす社会性

オキシトシンは社会性をもたらし、親しい人たちとの触れ合いを求め、共感し、助け合う。同時にオキシトシンはストレス反応でも分泌されるため、ストレスを感じると親しい人たちとの接触を求め、あるときは助け、またあるときは助けられるという逆の作用が生まれる。オキシトシンが心臓の細胞を再生しストレスで起きるダメージを治し、オキシトシンの体への利点は社会的繋がりやサポートで強められる。

・他者への思いやりが、ストレスによる死亡率すら下げる

経済的惨事や家庭危機などの大きなストレスを経験すると死亡のリスクが30%増加するが、他者を思いやることに時間を費やした人には、ストレスから来る死亡の増加はみられなかった。ストレス下にいる人に手を差し伸べることで、自分の中に回復力を作り上げる――。

“ストレス”をその場で実感させるために、マクゴナガル氏は「996から7刻みで引き算した数を言ってみてください」と聞き手を話への参加へと促し「さあ、どうでしょう」と煽るようなコメントを発している。

「これが実際の実験だったら、少しのストレスを感じるでしょう。心臓は高鳴り、呼吸は速くなり、汗が噴き出ているかもしれません。こうした肉体的変化は、プレッシャーにうまく対応してない時の兆候か不安感の表れだと思われています。ところが……」と続ける。

ここで実際に聞き手に“ストレス”の状態を感じさせることは、1.具体的に論点を実感してもらう、2.聞き手を話につなぎとめる、という2つの役割をはたしている。ともすれば「この話が終わったら何を食べようか」……などと考えていたかもしれない聞き手をぐっと話に引き込んで、“共同作業者”へと仕立てていくのだ。では、私たちの話の中では具体的にどのようにしたらいいのだろうか。