勝負強い監督、接戦に弱い監督……、監督の発想は、すべて現役時代のポジションから湧き出ている。歴代監督をポジション別に徹底分析する。

蟹は甲羅に似せて穴を掘る

過去25年、プロ野球の監督の取材をつづけ、実感している言葉がある。「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」ということわざである。人はそれぞれ分相応の考えや行いをするという意味だ。監督の発想は、すべて現役時代のポジションから湧き出ているのである。

巨人V9後の戦国時代、1974年から2013年までの40年間、日本シリーズの勝利監督を出身ポジション別に整理し、日本一の回数が多い順に並べると、次のようになる。

【捕手】13回
二遊間9回(二塁手と遊撃手を一本化したのは、古葉竹識《広島》のように、二塁手《632試合》と遊撃手《796試合》の出場試合数が拮抗している選手がいるため)
投手6回
三塁手5回
外野手4回
一塁手3回

捕手が13回(全ポジションの32.5%)と群を抜いている。

森祇晶(西武) 6回
野村克也(ヤクルト) 3回
上田利治(阪急) 3回
伊東勤(西武)  1回

海の向こうのメジャーリーグは、さらに傾向が顕著である。選手会のストライキで、ワールドシリーズが中止されたのは、1994年。その翌年からの19年間を調べてみると、捕手出身監督が10回(全ポジションの52.6%)もワールドチャンピオンになっている。

ジョー・トーリ(ヤンキース)が4回。ジム・リーランド(マーリンズ)、ボブ・ブレンリー(ダイヤモンドバックス)、マイク・ソーシア(エンゼルス)、ジャック・マッキーン(マーリンズ)、ジョー・ジラルディ(ヤンキース)、ブルース・ボウチー(ジャイアンツ)が、それぞれ1回。

日米ともに捕手出身監督が頂点に立っているのである。

捕手は360度の視野の広さが必要

日本一6回を誇る森が、日本球界に別れを告げ、終の棲家に定めたのは、日本とアメリカの中間にあるハワイ。ホノルルのコンドミニアムを取材で訪ねると、目の前がコバルトブルーの海。リビングルームの窓際に立つと、右手がパールハーバー(真珠湾)、左手がダイヤモンドヘッド(標高232メートル)。180度のパノラマだった。

森が捕手の強みを、こう強調した。

「ひと言でいうと、視野の広さ。捕手は野手に守備位置を指示するため、フェアゾーン90度を見渡している。両軍ベンチの監督はもちろん、背後に立つ球審の性格や癖まで目配りを欠かせない。視野は360度。この視野の広さが監督になって生きてくるんですよ」

(文中敬称略)