45歳頃に多くの人が生き方に悩み始める原因は「脳」だった

他人感情の受け皿である「右脳感情」に付帯した日々を続けていると、45歳を過ぎる頃になって、「これって、私自身が本当にやりたかったことなんだろうか?」と考えるタイミングが訪れます。

加藤俊徳『1万人の脳を見た名医が教える 好奇心脳』(プレジデント社)

これは、抑圧されてきた自己感情といえる「左脳感情」が目覚めて悲鳴をあげている状態。右脳感情と左脳感情の成長具合がアンバランスなために、脳の仕組み上必然的に起こることなのです。

左脳感情の目覚めに気づくことで、45歳からは、「右脳感情」と「左脳感情」を分けて考えることができる世代ということもできます。

近年、中高年になってから、学び直しのために大学へ進学したり、習い事を始めたりするといった現象が見られます。これは左脳感情の目覚めによって、自分自身が本来持っている「好奇心」を、もう一度呼び起こそうという意識が働く結果だと私は考えます。

45歳は自分を見つめ直すベストタイミング

ところが現実には、この「左脳感情」の悲鳴すら抑えつけてしまう人も少なくありません。

企業で働く人の多くは、定年を迎えて初めて、人生のセカンドステージを考えることを強いられます。60代になって、外からの圧力によって、右脳感情から解き放たれ、左脳感情を取り戻す必要性に迫られるわけです。

しかし脳科学的には、左脳感情が目覚める45歳前後が、右脳感情から左脳感情へ切り替え、自分の「好奇心」を見つめ直すベストタイミングです。

他人への付帯に重きを置いた感情から、もう一度、本来の自分の気持ちに正直になるこのタイミングを逃すことは、定年前の約20年を無駄に過ごしてしまうことにほかなりません。

好奇心は脳を活性化させる「魔法の薬」

45歳を過ぎた頃から、多くの人が、記憶力や認知機能の低下を意識するようになります。もちろん現実問題として、加齢に伴う「脳の老化のサイン」の可能性も否定できません。

しかし、記憶力や認知機能の低下も、左脳感情を抑えつけ、「好奇心」を失ってしまっているがために、脳が衰えた結果、起こっていることも少なくありません(記憶の中には「感情の記憶」があり、特に「好奇心」が強く影響しています)。

子どもの頃には誰もが、大小さまざまなことに「好奇心」を持ち、ワクワク・ドキドキした日々を送っていたはずです。

左脳感情から生まれる「好奇心」は、強力かつサステナブルで、持続性があります。この自分自身の「好奇心」でつかんだ記憶は、いくつになっても忘れることはありません。忘れてしまうのは、右脳感情(他人の基準)に付帯することで得た記憶で、左脳感情(自分自身)で選んだ記憶ではないからです。