「もし子どもがいなかったら」との闘い

【自分VS自分】

沼⑥自己実現

仕事をがんばりたいと考えているお母さんは、子育てをしながら働くことへの物足りなさや不満が心に渦巻いているケースが少なくありません。

自身が二人の子育てをしているとしたら、一人っ子を育てて管理職に昇進した人を見て心がざわついたり、独身で出世していく人と自分との境遇を比較してしまったり。隣の芝生は青く見えてしまいます。

日々、目前のことに追われて時間が過ぎていくので、自己実現している感覚がいつまでも得られず、不安やあせりにとらわれて、この沼にはまっていきます。

もし自分の目指すキャリアが描けていれば、今が満たされていなくても、「あと3年で子どもが○歳になるから、それまで自分はこんなふうに過ごしていこう」と、ある程度割り切ることができます。

自分の目指す姿が具体化していれば、今は子育てから得られるスキルやマインドを養う期間と位置づけて、他人を羨む執着を手放し、自己実現できていないと感じる沼から抜け出せるはずです。

幼少期から心の中に存在していた「沼」

沼⑦自分の成育環境

子ども時代は今よりもずっと繊細なので、「親にこういったことをされて嫌だった」「こんなことを言われて傷ついた」など、家庭からの影響を大きく受けます。もちろん、大人になる過程でそれを手放したり、癒やしたり、忘れていったりする人もたくさんいます。その一方で、心の中に深く残り続けている人もいるのです。

この成育環境の沼にはまっていると、うまくいかないことに遭遇したときに「親にあんなことを言われて育ったからだ」「こんな家庭環境だったからだ」と親のせいにするようになってしまいます。

また、「男性はいつも好き勝手に振る舞って、女性は振り回されるもの」「学歴がある人は幸せで、ない人は不幸」というような二項対立の刷り込みも生育家庭の影響を受けていることが多くあります。男性でも女性をサポートしたいと思っている人はいますし、学歴がなくても幸せに生きている人はたくさんいます。当たり前ですが、世の中は二項対立で割り切れるものではありません。

私の講座では、悩みや問題点を書き出したり受講生同士で話していたりする中で、自分の思い込みやバイアスが成育歴に由来するものだと気づく人もいます。

小さい頃に母親から「お父さんはだらしなくて、家のこともしないし、ゴロゴロしていて邪魔よね」といったことを聞かされ続けていると、自分が家庭を持ったときに、自分も子どもに対して無意識に同じ話をしてしまうことが往々にしてあるのです。成育歴は母親や父親への恨みがもとになり、深い沼となっているケースが多く見られます。