政府が65歳以上向けの「プラチナNISA」の検討に入った。高齢者にとって有利な制度なのか。マネージャーナリストの板倉京さんは「まだ不確定の要素が多いが、私なら使わない。利用をお勧めできる人とそうではない人がはっきりわかれる」という――。
お金の計算をする人
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高齢者マネーに期待する政府の思惑が見え隠れ

新しいNISA制度が始まり、投資を始めたという方も多かったと思います。

そのNISAに新たな枠が設定されようとしています。

「プラチナNISA」、65歳以上の人だけが使えるNISA制度です。

年齢を65歳以上と制限することで、高齢者優遇だという批判も耳にしますが、私にはこの新制度誕生には、高齢者マネーに期待する政府の思惑が見え隠れしているように思われます。

まだ詳細も決まっていない「プラチナNISA」ですが、有望な制度なのか、オトクなのかどうなのかを考えてみたいと思います。

NISAは金融資産保有額が高い高齢者に不人気

「日本人は死ぬときに一番お金を持っている」と言われますが、図表1を参考に金融資産の保有額を年代別に見てみると、年代が上がるほど保有額が多い傾向がみてとれます。

退職金などが影響していると思われますが、60代以降の平均保有額が突出しているのがわかります。

【図表1】年齢増別 平均金融資産額
出典=金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2021年)」

投資はお金に余裕がある人が行うもの、というイメージがあるかもしれませんが、実はNISA利用者は若者のほうが多いのです。

NISAの利用率を年代別に見ると20代が最も高く、年代があがるほど利用率は低下傾向です。

図表2を見ていただくとわかるように、20代が32.9%なのに対し、50代60代の利用率は20%を割り込んでいるのです。この統計では70代の利用率はわかりませんが、推して知るべしという感じでしょう。

【図表2】NISA年代別の利用率
出典=楽天インサイト株式会社「資産運用に関する調査」2024年

つまり、お金を持っている年代ほどNISAの利用率が低いということ。

これは、政府としてはがっかりの結果ではないでしょうか。