建築費の高騰と金利上昇が新築マンションの供給にも影響を及ぼしそうだ。住宅ジャーナリストの山下和之さんは「都心の高額物件を買える人はいいが、郊外のリーズナブルな物件を狙っている人はこれから二重苦に見舞われる可能性が高い」という――。
建設中のビルの上にクレーン
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建築費の上昇傾向は再び明確になっている

新築住宅の価格は、土地取得費、建築費、そして分譲会社の経費と利益を合計して、分譲戸数で割った金額が販売価格になる。2025年4月現在、そのいずれもが上昇傾向であり、今後の当面の間、新築住宅の価格アップは避けられない見通しだ。

まず、円高などによる資材高、人材難による建築費の高騰が再び深刻化している。図表1にあるように、建設工事費デフレーターは2024年の後半には横ばいに転じたものの、2024年末から2025年に入って上昇傾向が強まっている。建設物価調査会の調査でも鉄筋コンクリート造のマンション、木造住宅ともに工事原価は、前年同月比5%程度の上昇が続いていて、下がる気配はなく、住宅価格の押し上げ要因となっている。

実際、不動産経済研究所のデータでは、首都圏の新築マンション平均価格は、2025年2月は7943万円で、前年同月比11.5%の上昇となっている。なかでも東京23区は1億0474万円と1億円台が続いている。平均的な会社員ではとても手が届かないレベルになりつつある。

【図表】建設工事費デフレーターの推移(2005年=100)
出典=国土交通省「建設工事費デフレーター」

ローンが1割増えると返済額も1割増える

建築費アップがどのように影響するのか、価格上昇によって住宅ローンの借入額が増えた場合の負担額の増加を試算してみよう。35年元利均等・ボーナス返済なし、金利1.0%の条件で住宅ローンを利用する場合の毎月返済額は図表2のようになる。

借入額5000万円の毎月返済額は14万1142円で、年間の返済額は約170万円だ。それが、建築費が上がった結果、住宅ローンの利用額を5500万円に増やさざるを得ない状態になると、毎月返済額は15万5257円、年間では約186万円の負担になる。5000万円に比べて年間16万円、率にして10.0%、1割の増加だ。

さらに借入額が6000万円になると月額17万円近くの負担で、5000万円に比べて2割の負担増になってしまう。そうなると、「とても返済できない」と諦める人たちが多くなるのではないだろうか。

【図表】建築費の上昇による借入額増加の返済額返済の影響
筆者作成