親の注目を求めて「いい子」になる戦略

もっとも、同じような状況に置かれた子どもが皆、王座から転落したと思うわけではありません。石は手を離せば必ず落下しますが、きょうだい関係における転落は「心理的下降」(アドラー『子どもの教育』)なので、必ずしも誰にでも起きるわけではありません。実際に転落したのではなく、「下降」した、つまり王座から転落したと思い込む子どもがいるということですが、下降したと思わない子どももいて、彼らは弟や妹の誕生を喜び、親に協力しようとします。

しかし、弟や妹に奪われたと思い、王座から転落したと思った多くの第一子は、王座を取り戻そうとします。そのために、特別であることで親の注意を引こうと思うのです。

そこで、初めは「いい子」になろうとします。「今日からあなたはお兄さん、お姉さんよ」と、自分でできることは自分でするように親から言われた第一子は、以前は親と一緒でなければ寝られなかったのに、一人で寝たり、親の手伝いをしたりして親の期待に応えようとします。こうして、特別よくなろうとする――特別よくならなければ、親に注目されないと思うからです。

木製ブロックで遊ぶきょうだい
写真=iStock.com/kohei_hara
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「問題児」に変身する心理的な揺れ

親から頼まれたことを首尾よくやり遂げると、親にほめられます。しかし、ほめられた子どもは、ほめられるためにいい子になって特別によくなろうとしますが、いつもほめられるわけではありません。それどころか、親に言われた用事をうまくできなかったり、家事に忙しい親に代わって弟や妹の面倒を見ようとして大泣きさせたりするようなことがあると、「余計なことをするからだ」と叱られます。

親に喜んでもらえると思ってしたことなのに、失敗して叱られる――これが続くと、一転して、いい子であることをやめ、親が困るようなことをし始めます。トイレに失敗したり、夜泣きしたり、おねしょをしたりするというようなことです。以前は自分で何でもできたのに、突然できなくなるのです。

さらに、問題行動を起こすこともあります。赤ちゃん返りと呼ばれることがありますが、そのような行動は、親の注意を引くためです。子どもは親に叱られたくありません。しかし、親に叱られてでも親が困ることを一番困るタイミングで仕掛けることで、親の注意を引こうとします。

親は前のように子どもを愛さなくなったのではなく、ただ弟や妹の世話に手がかかるだけなのですが、第一子はそのことを理解できず、親に叱られると、やはり自分は愛されていないのだと思うようになります。