健康でも重症化や死亡のリスクがある
以上のように麻疹は感染しやすく治療薬がないので、多くの人がワクチンを接種して集団免疫を維持することが何より大切です。じつは日本でも、2001年には1歳代の麻疹ワクチン接種率が約50%と低く、2008年には麻疹患者数が1万1000人にもなりました。その後、1歳代で1回のみだった麻疹ワクチンの定期接種が2回になり、日本は2015年にWHOから麻疹排除状態と認定されたのです。
ところが、現在は再び接種率が低下し、コロナ禍前の2019年度は1歳で受ける第一期98.5%、就学前の第二期94.6%と高かったのに、最新の集計で2023年度には第一期94.9%、第二期92%になっています。
「感染症はかかったほうが免疫がつくから、ワクチンを接種しないほうがいい」と言う人がいますが、それは違います。ワクチンの目的は免疫をつけることではなく、麻疹で苦しんだり、命を失ったりしないことです。麻疹にかかると高熱に苦しみ、眠れないほどの激しい咳に見舞われます。
1000人に1〜2人が亡くなる感染症というのは、他の998〜999人が軽症で済むということではありません。事前にどの人が重症化して麻疹肺炎で入院し、麻疹脳炎になり、その後SSEPになるかということはわからず、健康な人でさえ重症化したり亡くなったりします。
免疫を高めるどころか低下させる麻疹
また、冒頭のご両親は「はしかは体によいものでウイルスが免疫系を強化する」と発言していますが、これも違います。むしろ重度の感染症にかかると、今までワクチンを接種したり、感染症にかかったりして獲得した免疫がなくなってしまうことがあるのです。これを「免疫健忘」「免疫のリセット」と呼びます。
新型コロナウイルス感染症になった後と同じく、麻疹にかかったあとも免疫がキャンセルされ、ワクチンを受けたり、既にかかったりしたはずの結核や水ぼうそうなどの病気にかかってしまうというリスクも増します。この免疫の喪失は、少なくとも数週間から数年間も続くのです。
ケネディ氏も「はしかにかかると、その後の人生でがんやアトピー性皮膚炎、心臓病に対する免疫力が高くなります」と言っていますが、そういったことを証明する研究はありません(※2)。仮にはしかでいい効果があったとしても、麻疹ウイルスに感染することで命を失う以上に悪い効果があるでしょうか。
※2 “Fact check: Robert F. Kennedy Jr. says measles infection may have benefits” (WRAL NEWS)


