聞きにくい質問こそストレートに聞く
「ニュースシブ5時」でディレクターをして1年目、番組プロデューサーから
「田中の質問のしかたって本質を得てないよね」
とグサッとくることを指摘されたことがあります。相手の表情を気にするあまり、相手に同調するような聞き方しかできず、「結局、何を聞きたいの?」とよくわからなくさせていました。たとえば、会見でも質問者の質問が長くて答える人が聞き返すことありますよね。そうなってしまってはダメです。質問した瞬間に、相手が答えを浮かべられるくらいじゃないと。質問は簡潔にしないといい答えは返ってきません。聞きにくい質問こそ短くする。監督に聞くときは、
「今回の大会も連覇がかかっていますが、実際のところ自信のほどはどうですか?」
って、パンって聞けばよいのです。聞きづらいことこそ、パンパン聞けるようになったのもこういう経験からです。
監督は威厳があり厳しい印象もありますが選手思いのとても優しいハートフルな一面も存じています。取材の経験上、横綱、幕内力士、著名人など、超一流の方ほど人格者で気さく、実は物腰やわらかなんだと感じています。
こちらが相手のお名前や経歴、凄さを知っていると尻込んでしまいそうになりますが、「聞きづらい」という雰囲気にのまれてはいけません。実はストレートに聞いたほうがスムーズにコミュニケーションができるのです。どんな質問でも「愛と敬意」を忘れなければ大丈夫。その想いは言葉足らずでも相手に伝わるはずです。
また、上の立場であればあるほど、厳しい質問、鋭い質問には慣れていらっしゃるので変に気をつかわなくても大丈夫。こちらがぐるぐる考えるのではなく相手の懐の深さに「お願いします」と甘えていけばいいのです。
「愛と敬意を持ってストレートに聞く」。相手が目上の方であってもこのことを忘れなければ大丈夫です。

ポジティブな言葉を添えて質問する
次の質問、どちらが受け手として気分よく話しやすいでしょうか?
B「営業マンからアナウンサーになったところが一番面白いと思ったんです。きっかけがどうしても知りたくて! 教えてください」
Aは「何度も聞かれている質問ですみません」、と聞くこと自体に申し訳なさを感じています。Bは「一番面白い」や「そこが知りたい」とポジティブな言葉がついていて、純粋に興味があり聞きたいという気持ちや熱量が伝わってきて答えたくなります。先ほどの青森大学の中田監督への聞き方を添削してみると……、
「今日の練習を見ていて、調子よくていけるんじゃないかなと思いました。連覇の自信のほどはどうですか?」
ポジティブな言葉を前につけた上でストレートに聞く。すると「いやいや、そう言ってもらってうれしいんだけど、まだまだなんですよ」と言うかもしれないし、「そういうふうに見てもらえてうれしいです。今回、自信あるんですよ」と答えてもらえたかもしれないです。