薬物依存症になる可能性を知っているのか

また、市販薬乱用の経験をもつ高校生は、経験がない高校生に比べ、睡眠時間が短い、朝食の摂食頻度が低い、家族全員での夕食頻度が低い、大人不在で過ごす時間が長い、親しく遊べる友人や相談ができる友人が少ない、悩み事があっても親(特に母親)に相談しない、コロナ禍でストレスを感じているといった生活上の特徴がみられた。インターネットの長時間使用(1日あたり6時間以上)の割合が高く、インターネットゲーム障害のリスクも高いという。

川野由起『オーバードーズ くるしい日々を生きのびて』(朝日新書)
川野由起『オーバードーズ くるしい日々を生きのびて』(朝日新書)

一方、22年の全国の中学生を対象にした調査(飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査)では、5万3623人から有効回答を得た。市販薬を乱用することによって薬物依存症になる可能性があることについては「知っている」が全体の71.6%、一度に大量の薬を飲むことで死に至ることがある可能性は「知っている」が78%を占めた。

15〜64歳を対象にした23年の全国調査(薬物乱用・依存状況の実態把握のための全国調査と近年の動向を踏まえた大麻等の乱用に関する研究)では、3026人から有効回答を得た。

市販薬の過去1年間の乱用経験率は、全体の0.75%で、過去1年以内に市販薬の乱用経験がある国民は約65万人と推計された。年代別でみると、15〜19歳が1.46%と最多で、次いで50〜59歳の1.24%だった。

市販薬の乱用で薬物依存症になる可能性があることを「知っている」は77.5%、一度に大量の薬を飲むことで死に至る可能性を「知っている」は86.6%だった。

川野 由起(かわの・ゆき)
朝日新聞記者

1993年生まれ。朝日新聞記者。仙台総局、さいたま総局を経て東京本社。子どもの虐待、社会的養育、ヤングケアラー、生活保護の扶養照会などを取材。NPO法人ASK認定依存症予防教育アドバイザー。