「イタリアで友達がほしい」と挑戦した女子生徒

生徒に話を聞いていく中で、印象的な声を聞いた。

高校3年生のさやかさん(仮名)はヨーロッパ研修の際にイタリアで「どうしても友達がほしい」と思っていたそう。しかし、彼女はその前に立ち寄ったスペインでスリにあい、パスポートや財布をなくした経験をしていた。それでも、「イタリアで友達がほしい」とチューターに相談したところ、背中を押された。

彼女はイタリアの街にひとりで立ち、知らないイタリア人に声をかけ続けた。1日目は無視されたり睨まれたりと、失敗。

チューターに相談をすると、「外国人がいきなり英語で話しかけてきて怪しまれているのでは? 親しみを込めてイタリア語で挨拶をしてみるのはどうだろう」とアドバイスを受ける。

翌日、さやかさんがアドバイスを実行すると状況は一変。フレンドリーに話してくれる人が一気に増えた。

さらに、キティちゃんのバッグを持っている女性を見かけたさやかさんは、「この人だ!」と思い、駆け寄ってイタリア語で話しかけた。「日本から来た」と告げると、とても喜んでくれたそう。彼女はそのイタリア人女性と今もSNSを通じて連絡を取り合う友達になっていると、嬉しそうに教えてくれた。

さやかさんに「チューターからは『危ないからやめておいたら』とは言われなかったの?」と尋ねると、少し考えて、「たぶん、すごく心配してくれていたと思います。でも、信じてくれたんです」と少し恥ずかしそうに語ってくれた。

「ゲーム漬けにならない方法」も話し合う

この出来事について、担当したチューターにも尋ねてみると、「本当に心配でした! でも、さやかさんと話をする中で挑戦させてみようと決めました。それでもずっと心配はしていましたけれどね。見事に突破力を発揮して、自己成長につなげてくれました」と心のうちを明かしてくれた。

規則にはめこむよりも、日々難しい判断が迫られるインフィニティ国際学院の学びの場。子どもに接するチューターたちは、日々の情報交換に力を入れて1人の生徒を全員で見守るよう気を配っている。

当校では、生徒4、5人に1人程度の割合でチューターが配置され、とことんひとりひとりに向き合える環境を整えている。だからこそ、生徒にも安心感が生まれているのではないだろうか。

「規則にはめることはない」と伝えたが、ルールがないわけではない。ルールが必要な時やトラブルが起きた時には常に子どもたちで話し合う。

異年齢でサークルになって学び合う
筆者撮影
チューターは生徒に問いかけて思考を促す

実際に、「皿洗いはどういうステップやローテーションにするか」「掃除はどうやって行うか」などは生徒たち自身が決めた。以前は、「9時以降、ゲーム漬けにならないようにするにはどうすればいいのか」を議題に話し合われたこともある。

異年齢で生活しているため、高校生の様子を見て、中学生も「こうすればいいのか」とならっていく。自然発生的に生活の中に学びが生まれていくのだ。