学費480万円でも全国から入学希望者がやってくる

昨年は、ネパールのヒマラヤでの研修も行われた。大自然の中で地球規模の課題について考えながら自分たちの小ささを感じ、さらにネパールにおける貧困問題にも直にふれていく。「とても自校らしい体験です」と大谷さんは言う。

ネパールで現地の生徒と死生観を語り合う
提供=インフィニティ国際学院
ネパールで現地の生徒と死生観を語り合う

これほど贅沢な学びの場が用意されているぶん、学費もそれなりの金額になる。入学金を除いた年間の学費は480万円超。家庭の経済状況に応じた奨学金制度もあるが、都内私立高校の学費が平均50万円程度であることを考えるとかなり高額だ。

それでも、全国から入学希望者があとを絶たないのはなぜなのか。拠点を置く北海道からの入学者は1割以下、青森県や群馬県などの各地、そして首都圏から入学する子も多い。また、海外のバックグラウンドを持つ子も複数人いる。

「もともと僕は教育畑の人間ではありません。自分でベンチャー企業を立ち上げたのをきっかけに、アメリカのシリコンバレーやアジアを回り、世界中の若者がイノベーションを起こしている姿を目の当たりにしてきました。

一方で、青森県の大学で学長として大学教育に関わるようになった6年間、日本の若者を間近で見てきましたが、世界の若者たちとあまりにも大きなギャップがあった。日本の若者は、少しでも有名な会社に入ることをゴールに、いわれたことを粛々とこなすのを是としていた。残念ながら、大人がこうした環境を作り上げてしまいました。

この課題の一つには、教室に子どもたちを閉じ込めた日本の教育があると感じました。そこで世界を旅しながら痛烈な原体験ができる学校を作ったのです」(大谷さん)

科目ではなく「コアマインド」と「コアスキル」で構成

インフィニティ国際学院の建学の精神は「10年後の世界を変える人材を育む」ことだという。そこに紐づけて、全職員で対話しながら8つの「コアマインド」と「コアスキル」を学んでいく。

【図表1】インフィニティ国際学院のコアマインドとコアスキル

中学生や高校生が、親元を離れ共同生活をしながら学びに向かう環境をつくっていくことは簡単なことではない。

「どこから先を子どもに委ねていくのかが難しい」と当校に関わる大人たちは口をそろえる。

管理や規則を厳しくすれば、それは従来の教育と変わらなくなってしまう。チューターが迷った時はコアマインドとコアスキルに立ち返り、子どもたちと対話するようにしている。

グループで発表内容を検討する
筆者撮影
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