泣く子を見るとつい…
とはいえ、肝心の子どもは当方をどう見ているのでしょうか。思い違いだとみっともないのですが、ぼんやりながらも好感を持ってくれるようです。
街中で信号待ちをしていて、前に立つ母親に抱っこされた赤ちゃんと目が合うことがよくあります。じっと見つめられると、よせばいいのに応えたくなります。
鼻を指で押し上げ、口を横に大きく広げ、吉川晃司さん似とたまに言われる目をかっと見開くと笑ってくれる。調子に乗って舌を出し、ぐるぐる回すときゃっきゃと声を上げます。
その段になると母親が異変に気づいて振り返ります。風体怪しき男が妙な仕草をしているのを認め、怪訝そうなお顔です。そりゃそうです。
でもわが子のはしゃぐ様子を見て、安心なさったように笑顔で会釈をしてくれます。
ああ、よかった。
助太刀いたす
同じようなことを混み合う地下鉄の車内でも、ついやってしまいます。抱っこ紐にくるまれた赤ちゃんが、小さな肩を震わせて泣きじゃくっている。
腹減ってんのかなあ。熱がなきゃいいけどなあ。
吊り革につかまって見ていました。
泣き声はどんどん大きくなります。母親は申しわけなさそうな表情でわが子をあやしています。
及ばずながら、助太刀いたす。
おかあさま、赤ちゃん、あなたたちは何にも悪くありません。
まずは仕事道具の入ったバッグを床に置き、空いた両手でおのれの顔を覆います。
赤ちゃんがこちらに注目したことを確かめて両手をぱっと離し、「ばあ」と音量控えめに告げます。ご明察の「いないいないばあ」です。
かつて出張した米国でも中国でも、現地のお子たちに大好評でした。万国のご機嫌斜めキッズに通用すること請け合いますぜ。ぜひお試しください。
泣き止んでくれたらこっちのもんです。例の鼻突き上げ、舌の360度回転を繰り出せば天使の顔に笑みが広がります。あら不思議、周囲の人たちの表情まで柔らかくなっています。
身内は「特殊な才能や技術のなせる業に非ず。同年代の仲間と見られているからに過ぎない。図に乗らぬが賢明」と分析&忠告します。
当方をお友だちと思ってくれているのか。
今度、赤ちゃんに聞いてみます。