テレビタレント志向ではないから、優勝後も参戦を決めた

ラリー遠田『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)
ラリー遠田『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)

さらに言うなら、ほかの芸人は「M-1」を売れるための手段だと考えているようなところもある。「M-1」で優勝すれば、それをきっかけにしてテレビにたくさん呼ばれたりして、そちらで活躍できるようになるかもしれない。ほとんどの芸人はそのコースを目指しているので、優勝した後でわざわざ再出場して無駄な苦労を背負う気にはならない。

だが、令和ロマンはテレビタレント志向の芸人ではない。だからこそ彼らは何の迷いもなく「M-1」再挑戦を宣言できたのだ。

血と汗と涙ではなく、お笑いへの純粋な興味や好奇心と戦略でつかんだ勝利。令和ロマンは、これまでのお笑い界の常識を覆す新時代のチャンピオンとなった。

ラリー 遠田(らりー・とおだ)
ライター、お笑い評論家

1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『逆襲する山里亮太 これからのお笑いをリードする7人の男たち』(双葉社)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など多数。