お菓子は3人で2つ

子どもが3人いるため、買い物にはよく行った。買い出しに行くと必ず子どものおやつも買っていたのだが、1つだけルールがあった。3人分のおやつは、2つだけ買うことだ。買い物から帰ってくると子どもたちは買い物カゴに飛びつくが、3人で2袋のお菓子を分け合う状況になる。そして、各自が少しでも多く食べようとして、厳しい駆け引きが始まるのだ。

「私が一番お姉ちゃんだから、一番多く食べるべきよ」
「何よ、育ち盛りの私が食べるべきでしょ」
「私、食べるのが遅くていつも少ししか食べられないから、今回は私がたくさん食べる」

こんな具合で、大騒ぎになる。ついには誰か1人が泣き出すこともあった。いっそ3袋買っておけば、各自の分を部屋に持っていって食べるだろう。そうすれば喧嘩になることもなく、家庭は平和になるのかもしれない。なのに、どうして2人分しか買わなかったのか。

経済的に余裕がなかったから? ぜいたくな暮らしはできなかったので、それも間違いではないが、お菓子も買えないほどの貧乏ではなかった。真の理由は、子どもには多少の不足を経験してほしかったからだ。

2杯のアイスクリーム
写真=iStock.com/Somkuan Rimsmutchai
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「少し足りない」状況をつくる

何でも手に入るよりも少し足りないほうが、子どもにとっていい場合がある。限られた物を分け合う過程で、相手の立場を理解しないといけないことを学べるし、自分の立場を理解させるための理屈を考える機会にもなるからだ。足りないということは、逆に言えば未来への期待と欲求がある状況を意味する。

不足を埋めようとしたとき、苦労せずに簡単に手に入れば、それで満足してしまう。反対に、努力して手に入れれば、自信と達成感を味わうことができる。

幼い子が食事をするとき、親が食べさせるよりも自分で食べられるように見守るべきなのは、こういう理由からだ。さらに、常に残るほどの量を与えて腹いっぱいにさせるより、少し物足りないくらいの量にしておいたほうが、次の食事への期待が高まるだろう。

服も着せてあげるより、自分で着るようにさせた。そして、あまり着ない服をたくさん買い与えるのではなく、我慢させて本当に気に入った服だけを買ってあげるようにした。