買い替えなら都心の戸建住宅の購入も可能?

現在の金利で返済負担率を多くの銀行が審査基準の上限としている35%で試算すると、借入可能額は図表5のようになる。年収500万円だと、全期間固定金利型では4550万円のローンが限度だが、年収1000万円になると、9100万円に、年収1500万円では1億3650万円に、年収2000万円だと1億8200万円に増える。

多少のリスクは覚悟で金利の低い変動金利型にすれば、借入可能額はもっと増えて、年収2000万円なら2億円を突破する。これに、売却によって得られる代金を自己資金に加えることができれば、かなりの高額物件の購入が可能になる。先の不動産会社の社長がいうように、マンションだけではなく、戸建住宅を都心近くに取得することもできるはずだ。

これからの住宅市場において、“パワーファミリー”への期待が高まるのも納得できるのではないだろうか。

【図表】年収別借入可能額
筆者作成

“パワーファミリー”が価格上昇を下支え?

もちろん、若いうちには都心のマンションを買うことができなかった人もいただろうが、それでも、東京23区であれば、先の図表3にあるように、10年前との騰落率は50%前後から60%台となっていて、大幅に資産価値が高まっている。都心5区ほどにはいかないにしても、買い替えには十分な価格上昇ではないだろうか。

マンション価格などは、高くなり過ぎていて、平均的な会社員では手が届かなくなりつつあるので、そろそろ頭打ち、横ばいから下落に向かうのではないかという観測(期待?)もあるが、期待はずれになるかもしれない。

パワーカップルだけではなく、この“パワーファミリー”が住宅市場に加わることによって、上昇一途の価格を下支えすることになり、当分の間上がり続けることになるのかもしれない。“パワーファミリー”を提唱しているのは大手不動産会社の社長だから、価格上昇を擁護する立場だけに、眉に唾つけて聞いたほうがいいのかもしれないが、さてどうだろうか。

山下 和之(やました・かずゆき)
住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本の取材、執筆、講演、セミナー講師など幅広く活動。著書に『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』『よくわかる不動産業界』など。