“Iメッセージ”でつらさを伝える
フキハラをしている人は、自分がフキハラをしていることに気付いていないことが大半です。ですから、まずは自分がいやな思いをしていることを、素直に相手に伝えることが必要です。
その際は、自分がどう感じているか、いかに苦しい思いをしているかを、自分を主語にした「I(アイ)メッセージ」で伝えるようにします。「私は、あなたが黙り込んで不機嫌な様子をしていると、『私が何か悪いことをしたんだろうか』と不安になってつらい」「私は、話しかけたときにあなたに無視されると、とても悲しい気持ちになる」などです。
「あなたのこういうところがダメ」「あなたの行動は子どものためによくない」など、自分以外を主語にした伝え方だと、上から目線に聞こえますし、相手の行動を一方的に批判して責めているように受け取られて、相手を怒らせたり反発させることになります。
メールやチャットだと、話したときの相手の表情がわからず、ニュアンスも伝わりにくいので、膝を突き合わせて直接話すようにします。最初はなかなかこちらの意図や深刻さが伝わらないかもしれませんが、フキハラを受けるたびに何度も繰り返して伝えます。
フキハラは、「不機嫌になることで相手をコントロールできた」という成功体験があると、さらにフキハラを繰り返すようになります。できるだけ成功体験を作らせないようにしてください。
相手のいないところで自分の時間を充実させる
何度伝えても改善しない場合は、接点を減らし、少しずつ距離を取るしかありません。コミュニケーションは、なるべくメールやSNSなどを使い、一緒に行動することもできるだけ減らします。どうしても一緒に出かけなければいけない場合は、短時間に留めるようにします。
確かに夫婦円満は理想です。でも、その形に執着して、自分ばかりが我慢して傷つく必要はないと思います。
残念ながら、相手を変えようとするのはエネルギーの無駄に終わることが多いです。相手を変えることに力を注ぐのではなく、相手のいないところで自分の幸せな時間を増やしてください。新しい趣味を見つけてもいいし、友達に愚痴を言うのもいいでしょう。精神科やカウンセリングなども活用し、くれぐれも自分一人で悩みを抱え込み、自分を追い詰めないようにしてほしいと思います。
構成=池田純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。