周りを委縮させ、自分の思い通りにしたい

そもそもフキハラ上司は、なぜフキハラをするのでしょうか。

おそらく、フキハラによる成功体験があるからだと考えられます。これまで、「不機嫌な態度を示しながらコミュニケーションすると、相手が自分の思い通りに行動する」という経験があるために、それを成功体験として学んでしまっているのでしょう。不安感や恐怖心を与えて萎縮させることで、相手を自分の思い通りに動かそうとしています。それは、意識的ではなく、無意識に行っていることも多いでしょう。不機嫌な態度を示して場をコントロールすることに、味を占めているともいえます。こうした関係性の中でしか意思疎通ができなくなっているのです。

フキハラは、表面にあらわれる行動はパワハラとは異なっているかもしれませんが、不安感や恐怖心を抱かせ萎縮させることで相手をコントロールしようとしている点では、パワハラとよく似ています。フキハラ上司は、パワハラ予備軍だともいえます。

こうしたコミュニケーションは決して健全とはいえません。業務効率を下げるだけでなく、社員の育成を妨げますし、メンタルヘルスにも悪影響があります。会社の風土の悪化につながりますし、フキハラ上司の存在が、部下の離職の原因になることもあります。会社としても組織運営上、放置しておいていいものではありません。介入し、フキハラをしている当事者には、改めるよう伝えるべきですし、日ごろから、部下からのフィードバックを取り入れる評価制度にしたり、フキハラの疑いがある上司には、適切なコミュニケーションに関する研修を受けさせるといったことも必要でしょう。

接点を減らし、やりとりはテキストに

先ほどもお話ししたように、深刻さが伝わりにくい面があるため、必ずしも被害について1回訴えるだけで会社が丁寧に対応してくれるかはわかりません。できればほかの被害者と協力するなどして、上司の上司や、人事担当部署などの信頼できる窓口に相談してほしいと思います。

しかし、会社が対応してくれない場合は、フキハラ上司からどうやって自分を守ればいいのでしょうか。

まずは、できるだけ直接やり取りする接点を減らすことです。コミュニケーションは、できるだけメールやチャットなど、テキストベースのもので行うようにします。それでも「はい」「どうぞ」といった一言で終わりの答えを返してくるなど、冷たい返事がくるかもしれませんが、目の前でため息をつかれたり、イライラした様子を見せられるよりはましです。できれば他の人をccに入れるようにするといいでしょう。テキストだと記録が残るので、会社に相談するときにも証拠として使えます。