「大丈夫?」の一言が新人を救う

新人のころはわからないことが多いものですが、上司に質問しようとしても上司が忙しくしていると、質問できなかったりします。

藤田耕司『離職防止の教科書 いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』(東洋経済新報社)
藤田耕司『離職防止の教科書 いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』(東洋経済新報社)

それで身動きがとれず、時間ばかり過ぎていく。そして上司から「できた?」と聞かれ、「いや、ちょっとわからないところがありまして」と答えると、「じゃ、なんで早く聞かないの!」と叱られる。

そういったことが続いて心が折れると離職します。特に真面目で気が弱い人ほどこの傾向にあります。

上司としては「わからなかったら聞けよ」と思うかもしれませんが、真面目で気が弱い新人は、上司が忙しそうにしているとなかなか質問できないのです。

だからといって忙しそうにするなとは言いません。忙しいのに忙しそうにしないのは至難の業です。

その代わり、1日1回は「わからないところない? 大丈夫?」と声をかけてあげてください。この一言に新人は救われます。

このことをある製造業の会社の管理職の方に伝えたところ、こう言われました。

「わざわざ上司のほうから聞いてあげないといけないんですか? 過保護でしょ」

なるほど。お気持ちはわかります。「そこまでケアしないと辞めるようなひ弱な新人は、辞めてもらって結構」と言いたいのもわかります。

ただ、今は採用難の会社が多く、新人に辞められたからといって代わりの人を採用しようとしても、簡単には採用できない時代です。

そのため、ひ弱な新人であっても辞められないように関わり、粘り強く育てて一人前にしていくことが、今の時代の上司には求められるのです。

この点は、現場の上司の共通認識として持っておくことが重要です。

部下に指示する場面
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

直属の上司以外の相談先を作る

また、メンターとして特定の人を新人のお世話係として付けるのも効果的です。

メンターを付けることで、新人も「この人には遠慮なく質問してもいいんだ」と思えるため、より質問しやすくなります。

さらには、メンターに加えて人事の相談窓口を設け、そちらにも相談できるようにすると、より手厚いケアができます。

これはメンターを付けたものの、そのメンターが新人の指導を十分にしなかったり、メンターとの相性が悪かったりする可能性があるからです。

藤田 耕司(ふじた・こうじ)
経営心理士、公認会計士

1978年徳島県生まれ。早稲田大学商学部卒業。2004年、有限責任監査法人トーマツに入社。2011年に同社を退社。2012年、藤田公認会計士税理士事務所(現FSG税理士事務所)を創設。2013年、経営と心理と会計のコンサルティングを行うFSGマネジメント株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年、一般社団法人日本経営心理士協会を設立し、代表理事に就任。著書に『リーダーのための経営心理学』(日本経済新聞出版社)、『経営参謀としての士業戦略』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。