給料が出ない仕事をする大人はいない
しかし、ご褒美作戦を提案すると、「ご褒美がないと、やらない大人になったらどうするの?」と心配されるケースもあります。
もちろん、好きなことを生かして成長させることは大事ですが、今の世の中は、好きなことだけをして生きていけるほど、成熟していないと私は考えています。
特に、発達障害の子どもは、興味関心が特定の分野に集中しているため、自立に必要なスキルにモチベーションが働かないこともよくあります。
よって、興味のあることはどんどんやらせる。
一方で、興味のないことをしてほしい場合は、たとえば、「夕飯の準備を手伝ってくれたら、明日の分のチョコボールをゲット!」など、ご褒美を設定することが大切です。
大人は「ご褒美はけしからん」と思う人が多いですが、もし、今やっている仕事が「給料がなくなりました。無償でやってください」と言われたら、誰もやらないでしょう。
子どもも同じです。
自己肯定感を高めることにも繋がる
世の中好きなこと以外にも、やったほうがいいことがあることは、大人も子どももわかっています。
だから、能力の高い子どもは、興味は関係なしに取り組んでいる子どもも多いです(学校に来るなども代表的な事例です)。
しかし、発達障害の特性がある子は、興味のないことには、体が動きません。
これは身体の反応なので、何をどう説得しようが動きません。
それならば、「〜をしたら、ご褒美をゲット」というモチベーションの源泉を外部に設定するほうが、子どももやる気が出てスムーズに動けます。
また、成功体験も積めるので、自己肯定感を高めることができます。
「でも、ご褒美がなくなるとやらなくなるんじゃないですか?」と聞かれますが、当然ご褒美がなければやらなくなります。
しかし、一度覚えたスキルは残ります。
将来1人暮らしをしたり、働き始めたときに、「昔、家で料理つくったり、洗濯したりしたな〜」と思い出せればいいのです。
放課後等デイサービス、児童発達支援事業所、小学校等にて500名以上の支援に関わる。ADHD、ASDの当事者。専門知識と当事者経験に基づく知見を発信すると同時に、現在は星槎大学大学院修士課程にて研究活動を行う。著書に『ユニバーサルデザインの学級づくり』(明治図書出版)『子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本』(ソシム)、『「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ! 発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方』(大和出版)などがある。