小泉首相は衆議院を解散して、郵政民営化法案を通した
平成17(2005)年、参議院で郵政民営化法案が否決され、衆議院を解散し、選挙が行われました。日本では何かと評判が悪い郵政解散ですが、政権の命運を賭けた法案が参議院で否決された時、衆議院を解散するのはイギリスでは普通です。イギリス留学経験がある小泉も、本人にそれらしい発言はありませんが、イギリス流に解散したつもりだったのではないでしょうか。
そして、このときは小選挙区制です。小泉は全選挙区に郵政民営化に賛成の候補を立てると言って実行しました。昭和51(1976)年衆議院選挙(三木おろし、ロッキード選挙)のときと異なり、有権者はどうすればいいかわかっていました。自民党が84議席を増やし、衆議院のほぼ3分の2を占める圧勝となりました。
「全選挙区に郵政民営化に賛成の候補を擁立」しているのですから、その人に投票したら小泉首相を支持したことになります。小泉首相の自民党が勝てば、郵政民営化法案が通るのだなとわかります。対して、三木おろしの時には、誰に投票したら三木首相を支持したことになるのか、仮に自民党が勝ったら政治改革ができるのか否か、さっぱりわかりません。
小選挙区制で衆議院の3分の2を獲得し、改革を進めた
ロッキード事件でどんなに世の人々が怒っても田中(角栄)派議員を落とせなかった昭和51(1976)年衆議院選挙とは隔世の感があります。郵政選挙では落としたい議員を落とし、かつ、通したい議員を通すことができました。ノスタルジックに「中選挙区制のほうがよかった」と語る人がいますが、昭和51年の三木おろし選挙を思えば、中選挙区制がそんなによかったとは口が避けても言えないのではないでしょうか。なんだかんだ言っても小選挙区制は選択肢があるだけマシです。
なお、小泉は現職総理のときも月1回、松野頼三という三木の軍師に教えを請うていたといいます。三木の失敗にも大いに学んでいたことでしょう。
小泉内閣時代には政治改革が少し進みました。問題は日本国憲法には構造的欠陥があり、衆議院と参議院がねじれると政権運営ができなくなることです。自民党は第一党ではありますが、前年の参議院選挙では民主党が票をのばし、議席の3分の1を占めていて、拒否権集団となりえます。