根底にあるのは、家事や育児を担えない男性の長時間労働

そうして主婦になった女性たちの中には、「女性は家庭」という自らの価値観に沿って仕事を辞めたのではなく、続けたくても続けられなかった人もたくさんいるのです。夫が家事育児をしない、あるいは労働時間が長くて家庭に割く時間がないからこんなことになってしまったのだろうと思います。

調査結果によると、多くの女性が結婚・出産を機に退職して専業主婦となり、そして子育てが一段落した後で再就職しています。しかし、再就職で正規雇用の職に就くのは難しいため、多くの女性が低賃金の非正規労働者、つまりパート主婦となっています。

労働者階級の夫を持つパート主婦と専業主婦。この2つの階層に属する人が今から再び正社員になるのは、現在の日本では絶望的に困難と言っていいでしょう。労働者階級の中途採用はまだ一般的になっているとは言えず、男性ですら狭き門になっています。ブランクが10年ほどもある女性ならなおさらです。

残業している男性が即席めんで腹ごしらえ
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配偶者がいなくなったというだけで、簡単に貧困層に転落

では、こうした女性たちにはどんな未来が待ち受けているのでしょうか。『女性の階級』では、女性の非正規労働者のうち夫のいる女性をパート主婦、それ以外をアンダークラスと位置づけました。女性アンダークラスの収入は全グループの中で最下層であり、現代日本における貧困層のひとつの典型になっています。

そして、専業主婦やパート主婦はアンダークラスに陥るリスクが極めて高いのです。正社員の夫と離婚したり死別したりするとたちまち生活に行き詰まりますが、再就職しようにも現状では非正規労働者になる以外の道がほとんどありません。

配偶者がいなくなったというだけで、いとも簡単に貧困層に転落する。これは女性特有の現象です。結婚・出産後に仕事を続けなかった、あるいは続けられなかっただけで、危険と隣り合わせの危うい立場になる原因をつくってしまったということになるのです。

離死別経験のある女性アンダークラスの職業経歴を見ると、結婚直前までは無職は約23%に過ぎなかったのが、結婚直後には60%近くにまで跳ね上がっています。正規雇用で働いていた女性の大部分が退職して無職、つまり専業主婦になったのです。そして離死別1年前には、専業主婦からパート主婦に移行する人が増え、無職の割合は36%程度にまで低下します。