課題は成功体験がある男性の意識
会社としては業務効率化、働き方改革、業務バックアップのしくみ、評価制度といった全方位で取り組むことになる。会社として制度を整備する一方、職場では助け合う風土を醸成する。とくに女性活躍について理解を深めるなど、意識改革への取り組みは欠かせない。
「男女を問わず、意識面の課題はあると思います。意識は急に変わらないので、少しずつ少しずつ進めていくしかないですね。年代による考え方の違いもあります。30代前半までの人たちは、男女はほぼイコールという意識が染みついている。課題は、成功体験がある男性の意識。おそらく時間はかかるでしょうが、いずれ変化すると思います。日本経済の成長という観点からも、ダイバーシティ エクイティ&インクルージョン(DE&I)は真剣に取り組む必要があると考えています」
マネジメントは子育てと同じ
育児経験が仕事に役立つ場面はほかにもある。「部下が育つ上司」「部下想い」と評される最勝寺さんのマネジメントスタイルには、子どもへの愛情に似たマインドが色濃く出ている。
「自分の子どもと同じだと考えるとわかりやすいんです。自分が産んだ子でも別人格だし、親の所有物みたいに扱うと失敗する。子どもが悪さをすれば、親は相手のところへ謝りにいく。子どもと同じだと思えば、部下のために謝ることも平気です。なにより成長が楽しみなのも同じ。長所は伸ばしたいと思うし、欠点を注意するのも成長が楽しみだからです」
最勝寺さんはもちろん、部下が失敗してもパワハラまがいに大声で怒鳴るようなことはない。ただ、教育的な指導とパワハラの線引きが難しい時代になったという思いはある。
「娘が3歳の頃、一緒にスーパーから帰ってきたら、買った覚えのないアクセサリーを持っていたんです。きれいだから持ってきたと。すぐ娘とスーパーへ戻って謝ると、店員さんは『わざわざ返しにきてくださってありがとうございます』とお礼を言われたんです。私は娘を叱ってほしかった。幼い子が悪気なくやったことだし、商品を返して謝っているのだからきつく言うことができないのはわかります。ただ娘のためには、親だけでなく、店員さんからも叱ってほしかったんですね。これも時代なのかなと思う一方、会社でも部下を指導できない風潮が広がるのはよくないと心配になりました」
自分の子と同じなら、部下をしっかり指導できる。成長を望んで指導するのと、自分の感情を爆発させるパワハラとの違いだ。社内の人づくりや教育について考えるうえでも、子育ての経験は役立っている。