③ iDeCoと退職金は受け取る順番を工夫→数十万円手取り増

iDeCoの受け取りには、退職金と同様に「一時金」「年金」の2種類があり、金融機関によっては「一時金+年金」で受け取れます。

一時金受け取りでは退職所得控除が適用され、年金受け取りでは、公的年金等控除を受けられます。

前述の通り、退職所得控除を活用するのが、手取りを増やすポイントですが、退職所得控除は退職金とiDeCoを合算した金額に適用します。このとき、iDeCoを先に受け取るか、退職金を先に受け取るかで合算の対象になる年数が異なります。

退職金を先に受け取り、iDeCoを後から受け取る場合

「前年から19年以内」に受け取った一時金が退職所得控除の合算の対象
→退職金受け取りから20年を空ければ、iDeCoの退職所得控除が使える


iDeCoを先に受け取り、会社の退職金を後から受け取る場合

「前年から4年以内」に受け取った一時金が退職所得控除の合算の対象
→iDeCo受け取りから5年を空ければ、退職金の退職所得控除が使える

つまり、iDeCoを先に受け取り、5年以上空けてから退職金を受け取れば、退職所得控除がiDeCoと退職金の両方に使えるため、税金が安くできるというわけです。

退職金を先に受け取り、20年以上空けてからiDeCoを受け取ることでも、退職所得控除が利用できますが、現実的ではありません。つまり、退職金とiDeCoを両方受け取れるなら、iDeCoを先に受け取ったほうがいい、というわけです。

実際にシミュレーションしてみましょう。

【例】
・勤続年数30年、iDeCo加入年数20年
・退職金:1800万円、iDeCo:600万円

①60歳で退職金とiDeCoを一時金で受け取る
②60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で退職金を一時金で受け取る
③60歳で退職金を一時金で受け取り、61歳でiDeCoを一時金で受け取る
④60歳で退職金を一時金で受け取り、60~69歳でiDeCoを年金で受け取る

の4パターンの納める税金額は、次のとおりです。

【図表】退職金とiDeCoの受取方シミュレーション
出典=頼藤太希、高山一恵『マンガと図解 定年前後のお金の強化書』(宝島社)

60歳で退職金とiDeCoを一時金で受け取った場合は、退職所得控除は長い方が適用されます。納める税金は92万2500円です。

定年が65歳、または60歳定年でも再雇用終了時の65歳に退職金がもらえるという人は、iDeCoを60歳で受け取れば、それぞれの退職所得控除が活用できます。税金は約70万円も安くなります。

65歳で退職金が取れない場合は、iDeCoを退職金と同じ年に受け取らず、その翌年以降に回しましょう。iDeCoに退職所得控除が使えなくても、受け取る時期をずらすことで適用される所得税率が下がり、結果として図表3の通り、税金が減らせる可能性があります。

iDeCoは年金形式でも受け取れるので、この方法でお得になる受け取り例も記載しています。60歳で退職金を受け取り、60歳〜69歳の間でiDeCoを年金で受け取ります。この間、公的年金を受け取らずに70歳まで繰り下げを行えば、公的年金等控除をフル活用できます。

公的年金等控除は、60歳〜64歳までは60万円、65歳以上は110万円まで非課税になるので、iDeCoの年金はすべて非課税で受け取れます。