② 退職金は一時金受け取りを優先→百数十万円手取り増
退職金の受け取り方には、「一時金」「年金」「一時金&年金」の3通りがあります。どう受け取るかで退職金にかかる所得税・住民税、社会保険料が変わります。
一時金で受け取る退職金は「退職所得」という所得になります。退職所得は分離課税といって、他の所得とは区別して課税されます。退職所得は、「(退職一時金−退職所得控除)×2分の1」という式で計算します。
ただし、勤続年数が5年以下の場合、退職所得300万円超のときは2分の1を適用できないルールです。
退職金が退職所得控除よりも少なければ、税金はかかりません。退職金が退職所得控除よりも多くても、退職所得となるのは「超過分の2分の1」ですから、一時金受け取りの節税効果が大きいことがわかります。一時金で受け取る場合は社会保険料の負担もありません。
年金で受け取る場合は、退職所得控除は使えない代わりに「公的年金等控除」という控除が利用できますが、控除される金額は退職所得控除よりも少なくなります。
退職金が退職所得控除より多い場合は、退職所得控除の金額までは一時金、残りを年金で受け取る「一時金&年金」を利用すれば、退職所得控除も公的年金等控除も活用しながら税金を減らせます。年金で受け取る部分は、なるべく時間をかけて少しずつ受け取るようにすると、毎年の年金にかかる税金や社会保険料も少なくできます。
このうち、退職金の手取り金額を最大化できるのは「一時金」です。
実際にシミュレーションしてみましょう。
【条件】
・東京都文京区在住、38年間勤続で退職金は2000万円
・60歳から64歳までは再雇用され年収300万円。協会けんぽに加入
・年金(退職年金)は10年間で受け取る(予定利率1.5%)
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除、所得金額調整控除のみ
この条件のとき、
②2000万円を年金で受け取った場合
③1000万円を一時金、1000万円を年金で受け取った場合
の3パターンの手取りの合計金額は、次のとおりです。
額面合計がもっとも多いのは「②年金で受け取り」。まだ受け取っていない年金が会社の運用によって増えるためです。しかし、手取り合計がもっとも多いのは「①一時金で受け取り」になっています。その理由は、「退職所得控除」と「2分の1課税」があること、社会保険料がかからないことからです。
したがって、
・「退職金が退職所得控除よりかなり多い」…退職所得控除の分は一時金、残りは年金
とすると、税金を減らし、手取りを増やすことができます。
手取り面では、一時金受け取りが良いことをわかっていても、まとまったお金を受け取ると無駄遣いしてしまうという場合は、年金受け取りが良いかもしれません。
手取りは多少減ってしまいますが、退職金を小分けにして少しずつ受け取れるので、無駄遣いの防止に役立ちます。