結婚はしたい。でも……

「1時間後に将来のパートナーに出会ったら困る」という答えの中には、そもそも本当は「結婚したくない」という本音が隠れていることも少なくない。

S奈さんは、外資系企業に勤める39歳。仕事も順調で、30歳になるときに購入したマンションで快適に暮らしている。年齢的に、「子どもを産むとしたら、そろそろ始めないといけないのかも」と婚活を始めることにしたという。

S奈さんは、さっそく婚活アプリと結婚相談所に登録した。ちなみにS奈さんの家はスッキリと片付いていて、お気に入りのインテリアで整えられている。身だしなみにも隙がなく、「いつ運命の相手に出会っても困らない」状態をキープしている。

ところが、S奈さんの婚活は難航した。積極的に出会いを求めて、1週間に1人のペースでお見合いをしているにも関わらず、パートナーとしてふさわしい相手に一向に出会えない。一緒に食事をしたり美術館へ行ったりすることはできても、生涯のパートナーとして見るとどこか足りない人ばかり。「この人なら、まあいいか」とこちらが妥協しても、結婚について具体的な話を切り出したとたん、相手が及び腰になるケースもあった。

40代、50代になると、S奈さんのように自分の生活の基盤ができあがっている人が多い。一方で結婚とは、赤の他人と生活空間をシェアすることだ。お互いのペースを尊重し、話し合いを重ねて2人の生活を築いていかなければいけない。子どもができればなおさら、自分の時間はなくなるし、家族に対する責任も大きくなる。

相談に訪れたS奈さんに、私がまず確認したのはそのことだった。「本当に結婚したいと思っていますか」何度もそう尋ねると、S奈さんは「結婚はしたいけれど、快適で自由な今の暮らしを手放したくないという気持ちもあります」という本音を明かしてくれた。

ノートに書く人
写真=iStock.com/maruco
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S奈さんに必要なのは、やみくもに出会いを増やすのではなくて、「どんな人と、どんな結婚生活を送りたいのか」を考えて、「理想の人リスト」を作ることだ。自分にとっての理想のパートナー像が定まっていない状態では、どんなに出会いを重ねても「どこかが足りない」「何かが違う」という感覚に陥り、前に進むことができない。

沼から脱出するポイント
●自分自身に「3つの質問」を問いかけてみる
●アプリに登録する前に
「まずは準備を」(不要なもの、デジタルデータ)
「理想の人リスト」(どんな人と、どんな生活を送りたいのか)

「婚活をしているのに、いい人がいない」という「婚活沼」に陥ったときは、前述した3つの質問をして、自分自身に向き合うことをおすすめしたい。婚活アプリや結婚相談所に登録するのは、「自分がどんな人と、どんな結婚をしたいか」というイメージがはっきりしてからで遅くはない。

伊藤 友美(いとう・ともみ)
アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラー

1970年生まれ、東京在住。約9年間の婚活中には、条件を下げたり、妥協を重ねることで「婚活ウツ」を発症。そこから研究を重ね、数々のワークを生み出し、実践。39歳から再開した婚活では、出会いから2カ月でプロポーズに至るスピード婚を果たす。自身の経験を通じて構築した〈最短最速で理想通りの男性と結婚する方法〉を伝える「3ヶ月で全員婚活卒業!婚活塾」は全国から参加の受講生で毎回即満席となる。受講生の成婚年齢は40代が一番多く、平均44歳。50代の成婚者も少なくない。結婚相談所Lulu Spacesの代表も務める。近著は『結局、理想を下げないひとが選ばれる』(フォレスト出版)。