自分と同じような人がいることを知る

結婚を意識したのは、ひとえに世間体ゆえのこと。

両親からの“結婚圧”はなかったが、祖父母は「結婚して、子どもを産んで当たり前」という揺るがない価値観を持ち、職場でも飲み会のたびに、男性上司から「出会いとか、どうなの?」と聞かれることが面倒でならなかった。

「聞かれても、答えられる内容は変わらないし、一般的な結婚は無理だとはわかっていたので、できるとすれば友情結婚。同性愛とかで、異性と恋愛関係を持てない人が、友情結婚をされている例が、数は少ないけどいるんだと、ネットの匿名掲示板で活動している人のブログを検索して見ていました」

半年に1回ほど、友情結婚を検索していた翠さんに、「カラーズ」の名が浮上した。

「友情結婚を知ってから、2年ぐらい経っていたと思います。結婚相談所があるんだーって。サイトに成婚体験者の話が載っていて、隅々まで読んで実績を知り、ここだったら活動してもいいかと問い合わせをしました」

カラーズ代表の中村光紗ありささんとの面談で、翠さんは初めて自分のことを言葉にして話した。

同じような人が実際いることも、初めて知った。ここなら信頼して、婚活ができると確信した。26歳の時だった。

「相手に選んでもらう」方針で婚活

「婚活は1年間と期間を決めてやってみて、もし、見つからなかったら、そういうご縁だったのだと結婚自体をスパッと諦める気持ちで入会しました。年齢が若い方が有利だという知識はあったので、有利な段階で活動して、自分をいいなと思ってくださる方がいなければ仕方ない、そこまでかなと。だったら、結婚しない人生を生きていこうと」

何という、思い切りの良さなのだろう。ズルズルと婚活を続けるのではなく、翠さんは1年と決めた活動に自分の人生を賭けたのだ。結婚の条件はあえて、幅広いものに設定した。

「同居婚でも別居婚でもいいし、子どもも有り無し、どちらでもいい。お相手の方に合わせられるように登録しました。なので、“子ども有り”の分類になりました」

翠さんは「自分が選ぶ」のではなく、多くの人に会って、「相手に選んでもらう」方針で婚活をスタートした。

乾杯をする男女のシルエット
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

実はこれ、ずいぶん昔に熟年婚活を取材した時に、ベテランの方に指南された婚活の極意というべきもの。26歳という若さながら、翠さんはその極意を熟知していたわけだ。期間を1年と定め、できるだけ多くの人に会って、選んでもらう。翠さんの婚活は何とシンプルでブレがないのだろう。最終的に10人の男性と会うこととなったが、翠さんが厳しく確認したのは、子どもの養育についてだった。