子どもを育てる責任を持てるか

「子どもに関しては命の問題なので、お相手の方と、その子が成人になるまで、自分達が保護者として責任を負わなくてはならない。一緒に子育てをしていくことを真面目に考えているかどうか、そこは相手にけっこう厳しく聞きました。恋愛結婚なら、この人の子どもを欲しいという前提がありますが、自分達の場合はそれが全然ないので、人を育てるということを考えた時に、そこに責任を持てるかどうか。そこが大事になってくるわけです」

その意味では恋愛結婚のような、子育てに関する“ふわっとさ”とは対照的でもある。翠さんは男性同性愛者と交際(=話し合い)期間3カ月を経て、カラーズを成婚退会した。

相手の決め手はなんだったのだろう。

「決め手って特になく、同時に違和感もなかったので、私で大丈夫ならお願いしようかと。一点、子どもができない時はどうするかと。絶対に欲しい人の場合、離婚して、他の人を探す必要が出てくるので、そのあたりはどうですか? と細かく聞きました。お相手の方は、欲しいという気持ちはあるが、どうしてもではなく、二人で話し合いをして夫婦としての道を進めればいい、と。そこまで合意できたので、家庭というものの“共同経営者”としての土台ができたと」

妊活1年後に人工授精で妊娠

翠さんは、夫の存在を「パートナー」とは表現しない。

「友情結婚」ではあるが、「友情」とも違うと断言する。

二人の関係はあくまで、一つの家庭を築いていく「夫婦」という名の「共同経営者」。性欲でも支配欲でもない。そこに依存的なつながりは存在せず、あくまでドライに割り切った、対等な関係性なのだと、翠さんは冷静に捉える。

結婚式をしないというのも、お互い、合意の上のこと。同居するマンションではお互いが個室を持ち、時間が合えば一緒に食事をして、その後は個室で過ごす。

「家事は半々ぐらいで分担していますが、財布は完全に折半ではありません。私の仕事の収入よりお相手の方の金額が多いので、私のほうが家事を多めにしています。食事をしながら、普通に、夫婦の会話もありますね」

妊活は、結婚後半年後に開始し、人工授精で1年後に妊娠した。

妊婦のバックライトシルエット
写真=iStock.com/flapbocco
※写真はイメージです

「妊娠期間はかなり大変で、相手の方が支えてくれました。ごはんが作れなかった時は、『大丈夫だよー』って作ってくれて。子どもが生まれた時は母になった喜びはさほどなく、日々、一緒に過ごしていく中で、母親になった感じです。やっぱり可愛いし、大変なことも多いよなーって」