清掃や接客、エッセンシャルワーカーのプロ精神に驚き

ビジネスパーソンだけではありません。日本を訪れる外国人は、道やトイレがあまりにもきれいなことに驚きますが、それは清掃作業のクオリティが高いからです。デパートの売り場の方々の接客もすばらしく、私もそれを体験したときには「まさにプロだな」と感じ入りました。

日本で暮らしていると、何度も「なぜこんなにクオリティが高いことをさりげなくできるんだろう」と驚かされます。日本ではどんな企業の人も、どんな仕事の人も高いプロ意識を持っている。しつこいようですが、これは決して普通のことではありません。日本特有のものであり、非常に大きな強みです。

日本は、資源ではなく「人」の力で発展してきた国だと思います。また、先ほどお話しした通り、富裕層やエリート層よりも中間層が厚い国です。現在の日本が世界有数の経済大国という水準にあるのは、その中間層の人たちのレベルが極めて高いからにほかなりません。

日本の資源「人」の力があるから、経済も悲観しなくていい

いまは経済の低迷や円安が続いているので、日本はこのまま弱くなっていくのではと不安に思っている人もいるようです。観光客は増えているものの、さまざまな国の国際競争力が高まる中、一時的に自信を失っているのかもしれません。

ティムラズ・レジャバ『日本再発見』(星海社新書)
ティムラズ・レジャバ『日本再発見』(星海社新書)

でも私は、この国の「普通の人」のレベルの高さからすれば、日本企業はきっと競争力を取り戻せるだろうと思っています。海外の投資家も、日本の基礎力や底力に注目しています。長期的に見れば、やはり日本株には勝負強さや安心感があると。日本人にはそれだけの力があると思われているのです。

日本は長い歴史と固有の文化を持ち、かつ中間層のレベルも組織力も非常に高い国です。土台がしっかりしているわけですから、GDPが3位から4位になったって、ちょっと円安になったっていいじゃないですか。世界的に見れば、日本はまだまだすごい国なんですよ。

ですから皆さんには、自分たちの強みをしっかり自覚して、目先のことに惑わされず長期的な目で自国を見て、そしてプロフェッショナル精神を発揮し続けていただけたらと思います。

駐日ジョージア大使 ティムラズ・レジャバさん
撮影=市来朋久

取材・構成=辻村洋子

ティムラズ・レジャバ(Teimuraz Lezhava)
駐日ジョージア大使

ジョージア出身。1992年に来日し、その後ジョージア、日本、アメリカ、カナダで教育を受ける。2011年9月に早稲田大学国際教養学部を卒業し、12年4月キッコーマンに入社。退社後はジョージア・日本間の経済活動に携わり、18年ジョージア外務省に入省。19年に在日ジョージア大使館臨時代理大使に就任し、21年より特命全権大使。著書に『大使が語るジョージア 観光・歴史・文化・グルメ』(星海社、共著)など。