台所に行かなくても料理はできる

母と私は、チーズボードのような小さなまな板、ペティナイフ、キッチンバサミ、ピーラーを卓上に用意しました。場所が限られたテーブルでは、小さな道具類が使いやすいのです。調味料はコンパクトにまとめて食卓にセットしておきます。いちいち台所に取りに行くのは大変ですもの。また、酸化したり、香りが飛んだりがないように、容量の少ないものを選ぶのもポイントです。

調味料は小さめのものをそろえて、食卓にセット。木製のミニおかもちはお手製。
写真=鈴木泰介
※『103歳の食卓』より 調味料は小さめのものをそろえて、食卓にセット。木製のミニおかもちはお手製。

火元はIHクッキングヒーターなら安心です。IH用の小ぶりな鍋の準備も忘れずに。しばらくして一人用のホットプレートを見つけました。これこそ卓上クッキングにうってつけです。焼き物はもちろん、蒸したり煮たりもお手のもの。保温にしておけば鍋料理も冷めることなく最後まで楽しめます。シンプルなデザインなので、調理をしたら、そのまま卓上で食器としても使えますから片づけも楽ちんなのです。しかも、手頃な価格ということも魅力です。強い味方の登場となりました。

母が活用した一人用ホットプレート。着脱式で鍋と波型プレートを使い分けていた。
※『103歳の食卓』より 母が活用した一人用ホットプレート。着脱式で鍋と波型プレートを使い分けていた。

やってみればとても楽に料理がつくれる、と母も大絶賛。母の卓上クッキングは日々進化していきました。調味料をまとめて入れておけるおかもちをつくったり、キッチンバサミも器用に使いこなすようになりました。

荻野恭子『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(プレジデント社)
荻野恭子『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(プレジデント社)

料理をするということは、いろいろな作業を並行して行なわなければなりません。頭も体も大いに使います。手先を動かす作業もたくさんあります。料理には健康で長寿であるためのキーワードがびっしりと詰まっています。もちろん、食べたいものが食べられる喜びも大きいですよね。体に負担を強いることなく楽に料理がつくれる「卓上クッキング」。座って料理をつくるなんてことを提唱している人は見かけません。

私は母のひと言から思いつきましたが、今後、健康寿命を延ばしていくためにも、卓上クッキングの楽しさをたくさんの方たちにお伝えしていきたいと思っています。