男女ともに「密室」は危険な理由

密室では何が起こっても、起こってなくても客観的な証拠となるものがありません。また、男性は最初のデートで女性に名刺を渡し、職場がどこかを教えてしまっていたそうです。これもトラブルになったときに、職場に来られるリスクがあるのでNG。実際、男性もその点の不安が大きかったのではないでしょうか。

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写真=iStock.com/ArisSu
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美人局は、男性が「性犯罪の被疑者になった」というレッテルを世間に貼られたら大打撃になることへの不安を利用し金銭を要求してきます。性交渉はしなかったものの、奥手な男性が、お付き合いの前に女性を家に泊め実際にキスはしてしまったことの後ろめたさも利用されているのです。

男性の良かったと思われる行動は、いくつかありますが、「お金を払ってください」と言われたときに保留にし、弁護士に相談したこと。

とりわけ、女性に「警察沙汰にしますよ」と言われた場合への覚悟ができていたことは、重要なポイントでした。男性には「自分は犯罪行為などしていないから絶対に弁償などしたくない」という強い意志があったそうです。被害届を出されたくなかったらお金を払うしかなくなってしまっていたので、弁護士と共に戦うと腹をくくっていたことが、彼の不起訴へとつながったと思います。

文=土居雅美

鮫島 千尋
弁護士

東京弁護士会所属。鮫島法律事務所所長。犯罪被害者支援委員会委員・紛議調停委員・あっせん人補。日本交渉学会員・全国マンション問題研究会会員。一般社団法人弁護士業務研究所理事。週刊誌・NHK・民放番組等でコメントや番組監修を担当。弁護士向け研修講師を担当。熊本大学大学院(交渉紛争解決実践コース)にて、交渉・紛争解決学、弁護士実務における紛争解決スキルの実用性の研究を行う。現在は、犯罪被害者支援に注力しつつ、多くの民事・刑事事件を対応し、刑事では無罪判決を獲得している。また、対話による円満解決をモットーに、交渉学や紛争解決学の知見を活かし、日々活動を行う。