地道に市職員の出張記録を開示請求した東京新聞の森田記者

「團さんはじめ、共同通信は異様な行列の現場取材を多く重ねていたからこそ、動員が行われていると、より確信を持って、市教委に直接質問する取材を早い段階でできたのだと感じました。その取材過程に改めて敬意を表したいです。私の場合は、現場取材が2度だけだったため、それだけでは市教委にあてる根拠としては厳しいという感覚があり、開示請求で根拠を集めるという発想になりました。市職員の出張記録を出してもらい、たくさん出張があれば、後から事実を追究できるという狙いからです」(森田さん)

森田さんは、この事件の公判があった3日間を指定し、「横浜地裁に行った出張記録」と限定して開示請求をかけた。当初は資料の量も少なく、開示まで時間はかからないだろうと踏んでいたと言う。しかし、通常は2週間以内に開示・非開示の通知が来るところ、5月15日に「延長」の連絡があったのだ。

「会見でも動員が2019年5月から始まり、4件の裁判のうち11回の公判で職員に傍聴を呼び掛けたとか、23年度以降延べ371人の職員が駆り出されたと説明していましたから、資料自体は特定されているはずなんですね。延長の理由は『期限内の決定が困難』ということでした」(森田さん)

自治体や公務員についての開示請求は待たされることが多い

実際、ライターである筆者もこれまで東京都をはじめ、地方自治体や国などに開示請求をしたことが何度かあるが、欲しい情報は「非開示」となり、なかなか開示されない上に、「延長」が多く、内容によっては半年~1年くらい待たされるケースまである。

結果、第一報のスクープの軍配は地道に傍聴を重ねた共同通信に上がったかたちだが、團さんはこう振り返る。

「教育委員会が発表したのは、直接的には共同通信が質問状を投げたことがきっかけでしたが、東京新聞など複数社がこの件を問題だと思って取材していることを教育委員会側が把握したのが、発表すべき事案という認識につながったのだと思います。それに、われわれ、ふたりだけではなく、特に5月21日の記者会見では、参加した全社がかなり厳しい質問を投げかけ、会見は2時間半にも及びました」(團さん)