「繰下げ受給」と「加給年金」の恩恵を両方受けるには

「加給年金」をもらう際に注意しなくてはいけないのが、年金の「繰下げ受給」です。

少しでも多くもらうために、65歳からもらえる年金を70歳までがまんして、増やしてもらおうと考える人もいるでしょう。ちなみに、65歳でもらう年金を70歳までがまんすると、142%増えた金額を毎月もらえることになります。

ただし、「加給年金」は、老齢厚生年金を「繰下げ支給」してしまうともらえないケースが出てきます。

たとえば、65歳の夫と60歳の妻の場合、夫が70歳まで老齢厚生年金をもらわない選択をしてしまうと、妻の「加給年金」ももらえなくなるのです。

では、どうすればいいでしょうか?

夫が65歳からもらう年金は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建て。「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は、それぞれ別々に「繰下げ受給」にすることができます。そして「加給年金」は、2階部分の「老齢厚生年金」に付いているもの。

日本の公的年金制度
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

ですから、2階部分の「老齢厚生年金」は65歳から「加給年金」と一緒にもらい、1階の「老齢基礎年金」は70歳まで「繰下げ受給」すれば、こちらは142%増えたものを70歳からもらうことができるのです。

詳しくは、最寄りの年金事務所に出向いて確認するといいでしょう。

人生100年時代。定年後の約30年、少しでも生活不安をなくすためにも、さまざまな情報をチェックしておくことが大切です。「〜だろう」「〜だから」という思い込みは禁物。申請し忘れ、受給し忘れても、年金事務所は親切にハガキなどでお知らせしてくれません。年金は自ら調べて行動し、取得するのが基本だと肝に銘じてください。

荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。