日銀の長期国債買い入れ減額も短期金利の上昇要因に

冒頭で触れた、日銀の長期国債の買い入れ額の減額も、短プラが政策金利の上昇幅よりも大きくなる要因になる。減額は長期金利の上昇要因であることはすでに述べたが、時間経過とともに、短期金利への上昇圧力として作用する(この理由については稿を改めて解説したい)。

減額が大規模になるほど上昇圧力は強まる。政策金利が0.5%になった段階で、短プラが0.55%や0.6%になる可能性には留意が必要だろう。

返済期間が10年程度なら固定型への借り換えにもメリット

住宅ローンの借り換えに話を戻すと、変動金利がまだ十分低い水準であるため、借り換えにもリスクが伴う。現状維持を続けながら、将来の金利負担の増大に備えて貯蓄に励む、というのが基本となるだろう。

ただ、あと返済が10年程度で終了するという場合は、固定金利への借り換えを検討してもいい。支払額は増えるが、住宅ローンの残債もかなり減っているので、実質的な負担額はそれほど大きくは増えないはずだ。

政策金利が0.5%になった時点で、短プラが0.6%に引き上げられたとすると、現在の変動金利が0.3%ならば0.9%に上がることになる。例えば、SBI新生銀行には、10年固定型への借り換えで、手数料込みで金利1%程度の住宅ローンがある。この程度の差であれば、借り換えをするメリットはある。返済終了までの支払額を確定できるし、「金利はどこまで上がるのか?」といったニュースに一喜一憂するストレスからも解放される。特に、リスク許容度が低下するシニア世代にはおすすめできる。

なお、くれぐれも、ローンに完済の見通しがつくまでは、NISAなどでお金を増やそうとは思わないこと。巷間、「4~5年運用すればお金は増える」という論調が見られるが、投資に関しては「絶対」「確実」というのはない。まとまった余裕資金があれば、繰り上げ返済が選択肢となる。

松岡 賢治
ファイナンシャルプランナー/マネーライター

1963年生まれ。89年東京都立大学法学部卒業。証券会社のリサーチ部門等を経て96年独立、97年ファイナンシャルプランナー資格を取得。クレジットカードをはじめ資産運用・投資関連等の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』(SBクリエイティブ)、『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本』(ソーテック社)など。AllAboutガイド。