仕事時間を減らすヨコの改革と賃金を上げるタテの改革

【海老原】すごくいいお話ですね。ここまで二つの話が出ましたが、整理いたします。

まず、参加型社会への移行で、1人当たりの仕事を減らし、生活に時間的余裕を持たせること。二つ目が、生産性の高い企業に労働力を集め、社会全体の所得アップにつなげること。

この二つの改革を、私はヨコの改革(仕事を複数人で分担して労働時間を減らす)と、タテの改革(賃金のアップ)と名付けています。これができれば、自由とゆとりが生まれ、恋愛している暇もできるだろう、と。

実は私、この「タテ」施策と「ヨコ」施策、それぞれの適用分野をしっかり分けて考えるべきと思っています。「ヨコ」は、「労働者が潤沢にいて、分業が可能」な分野に、「タテ」は逆で、「労働者が希少で、低生産性企業が余っている」分野に、適用すべきでしょう。

【図表3】ヨコの連帯・タテの向上

ホワイトカラーは分業を進め、非正規は賃金アップを

【海老原】今の日本、実は少子化ながら、大卒者の数は増え続けており、この30年で1.6倍にもなっています。つまり、ホワイトカラー候補の絶対数は多いんです。

一方、高卒者は30年で5分の1まで減少、専門・短卒者も激減しています。近年では出産退職→専業主婦となる女性が減ったため、主婦パート人材も減少しています。加えて、高齢者雇用の主柱となる前期高齢者まで激減を始めました。非大卒・主婦・高齢者が活躍している非正規領域は、もう絶望的な人手不足となっています。

【図表4】人材層により、労働の希少性が大きく異なる

こうした全体像を見渡せば、「分業で余裕を持たせるヨコ施策」はホワイトカラーに、「企業淘汰で賃金アップを目指すタテ施策」は非正規領域に、分けて適用すべきとわかるでしょう。後者については、最低賃金の引上げが続き、現実はまさにその通りに進んでいます。足して、前者の「ホワイトカラーの分業」という改革は、日本人にはなじみがないのですが、こちらはいかがでしょうか。