授業に関わる自腹発生率が高い小学校非正規教員

そのなかでも特に高いのが小学校の非正規教員だ。自腹についての具体例についての自由記述をみてみると、異動の際に持って行けないことや、手続きが煩雑であるなどの理由があるようだ。ずっと同じ学校にとどまっていられないのは、公立学校のどの教職員も同じではあるが、非正規雇用の場合のほうがより流動性が高く、次年度以降のことを考えると、物品を自腹で負担して持って行けるようにしようという思考が働きやすいのかもしれない。

教員の自腹発生率が軒並み高いのに対し、事務職員の発生率はそれほど高くなく、12.7%(102人中13人)だった。相対的に低い割合にとどまったとはいえ、10人に1人以上は授業関連で自腹を切っているのは驚きだ。

彼らの自腹の内容としては、高機能製品を試しに買って使用させたいという回答や、予算切れのためにファイルを購入したという回答があった。

部活動に関わる自腹は22.6%

部活動に関わる自腹が2022年度1年間で発生したと回答した人は回答者全体の22.6%(1034人中234人)だった。

部活動に関わる自腹の有無については、部活動を担当しているかどうかが分水嶺になっていそうだ。ただし今回の調査では、部活動を担当しているかを尋ねた項目が質問紙に入れられなかったので直接的にそれを示すデータを提示することはできない。そこで、傍証ぼうしょうにはなってしまうが学校種別、職別の発生率から部活動に関わる自腹の実態を推測していこう。

部活動に関わる自腹をした人の多くが中学校教員だった(※2)。部活動に関わる自腹があったと回答した小学校教員が466人中36人(7.7%)だったのに対し、中学校教員では466人中193人(41.4%)だった(※3)

さらに具体的にみていこう(図表3)。小学校では、管理職層の13.5%(52人中7人)、正規教員の7.5%(362人中27人)、非正規教員の3.8%(52人中2人)が経験している。

部活動に関わる自腹発生率(1年間)
福嶋尚子、栁澤靖明、古殿真大『教師の自腹』(東洋館出版社)123ページより

中学校では、管理職層の25.0%(52人中13人)、正規教員の45.6%(362人中165人)、非正規教員の28.8%(52人中15人)が経験している。

このデータからは、小・中学校ともに部活動については非正規教員よりも正規教員のほうが自腹をしている人が多い傾向にあることが読み取れる。おそらくこれは正規教員と非正規教員の間の部活動に対するコミットメントの差からきているのではないだろうか。そもそも部活動の顧問をしているかどうかや、正顧問なのか副顧問なのかによっても自腹が発生するかどうかが変わってくるだろう。

※2 小学校については一部の地域・学校でのみ部活動が行われており、ほとんどの学校で部活動が実施されている中学校とは状況が異なっている。小学校で行われる部活動は、教育課程として定められた「特別活動」のうちのクラブ活動とは異なるものである。ただし、小学校で部活動を行うことが一般的ではない地域・学校の回答者がクラブ活動として読み替えて回答している可能性は否定できない。
また、部活動をめぐる状況が近年変化していることに注意しておいてもよいだろう。名古屋市のように従来は小学校でも放課後に教職員が指導する部活動を行っていたが、民間委託による「新たな運動・文化活動」へと移行した例もある。

※3 ちなみに、事務職員で部活動に関わる自腹があったのは102人中5人(4.9%)だった。