老化を抑制する体内時計の管理

1日24時間内で変化する体内時計、いわゆる「概日リズム」も加齢に伴い変化します。

概日リズムと睡眠覚醒サイクル
写真=iStock.com/Martin Broz
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体内では、脳の視床ししょう下部にある視交叉上核しこうさじょうかく(SCN)という小さな領域がタイマーの働きをしています。いわば“体内時計”であり、人体の制御システムです。具体的には、眼の網膜からの光による合図を受けて、外的時間と内的時間を合わせています。

一般的に体内時計の指標といえば、メラトニンやコルチゾールといったホルモンの増減や体温の変化が挙げられますが、加齢に伴い1日のうちでの振幅やピークが低下し、リズムも乱れてしまうことがあります。概日リズムの乱れは、肥満や心血管疾患といった疾患リスクの誘因にもなります。

また、人体の老化制御に重要な働きをする酵素「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」にとっても、この概日リズムは重要です。なぜなら体内でNAD+が再合成されるときに欠かせない「Nampt(ナンピーティー)」と呼ばれる酵素も、概日リズムの影響を受けるためです。

概日リズムによって、体内のNAD+量は変化する。つまり、体内のNAD+は、概日リズムに乗って、24時間周期で変化しているというわけです。

服用時間によって老化が進んでしまう…

ちなみにNAD+は、ミトコンドリアの活性化による筋肉や心臓、脳の機能改善など、さまざまな老化のリスクを正常化することが報告されています。そのため多くの人が、NAD+のサプリメントとして、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」や「NR(ニコチンアミドリボシド)を手に取られているようです。

私自身も、NMNを毎朝摂取しています。ただし、夜には摂取しません。

その理由は、先ほど述べたように、NAD+は体内でリズムを刻んでいるからです。

実際にマウスのデータでは、本来NAD+の量が下がっていなくてはいけない時間帯にNMNを与えてNAD+量を上げてしまうと、支障をきたすことが示されました。

脂質代謝に関わる遺伝子にネガティブな影響を与えたり、“時計遺伝子”と呼ばれる概日リズムをつかさどる遺伝子群を逆転させてしまうのです。つまり、ご飯を食べるタイミングと体内の分子的な時計があべこべになってしまい、代謝異常が引き起こされるのです。

「NMNやNRを摂取すると、身体に良い」という情報だけで間違った服用をしてしまうと、実は老化を促進させるためにサプリを飲んでいることにもなりかねません。老化の分子メカニズムに基づいた用法と用量、それらのしっかりした見極めが重要です。