朝晩の腹式呼吸で心臓突然死を防ぐ

われわれが日常で行っている呼吸は「胸式呼吸」と呼ばれ、胸を動かします。いっぽう、腹式呼吸は胸をあまり動かさず、胸腔と腹腔を区分している横隔膜を上下に動かして、お腹を大きく膨らませたりへこませたりする呼吸です。横隔膜を大きく動かすため一度に吸う量が多くなり、肺にどんどん血液が送られて血流がよくなります。肺の血流が促進されると、その分、心臓も活発に動くことになり鍛えられるのです。

腹式呼吸のやり方はいくつもありますが、ひとつ具体例を紹介します。まず、背筋を伸ばしてイスに座り、お腹に手を当てたまま鼻からゆっくり大きく息を吸い込んでお腹を膨らませます。次に口からゆっくり長く息を吐き出し、お腹をへこませます。吐くときは吸い込む際の倍くらいの時間をかけて行います。3秒かけて息を吸ったら、6秒かけて吐き出すイメージです。これを5回ほど繰り返すのを1セットにして、1日朝晩2回行うとよいでしょう。

腹式呼吸は、心臓に適度な負荷をコンスタントにかけられるので心臓突然死の予防効果があるとされています。また、日頃から呼吸法を行っていると呼吸が整うため、多くの場合で平均心拍数が低くなります。いくつもの研究報告で、心拍数が高い人は突然死しやすいことがわかっています。その点からも腹式呼吸は心臓の健康維持に有益といえます。

インナーマッスルも心臓の味方

腹式呼吸によって内臓を包んでいる「インナーマッスル」が鍛えられることも心臓によい影響を与えます。インナーマッスルは深層筋と呼ばれ、脊椎や骨盤を支え姿勢保持などにかかわっている深いところにある筋肉です。姿勢や関節の安定性を高めるだけでなく、呼吸にも関係しています。

心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割を担っています。インナーマッスルを含めた全身の筋肉は、心臓から送り出される血液を受け取る側で、それがしっかり活動していると血圧が安定するなど心臓の負担が減るのです。

さらに、腹式呼吸をお風呂などの湿度の高い場所で実践すると効果が高くなります。好みの香りのアロマオイルなどと組み合わせると副交感神経が優位になる効果も期待できます。副交感神経が優位になると、心拍数が抑えられ、血管が拡張して血圧も低下するのです。

呼吸法で心臓の健康管理をする場合、日頃から心拍数=脈拍数を計測して把握しておくことをおすすめします。また、血中の酸素飽和度を計測するパルスオキシメーター(経皮的動脈血酸素飽和度測定器)があれば、腹式呼吸を何回行うと最大値に到達するかを確認しておくといいでしょう。

腹式呼吸をどのくらいのスピードで何回行えば心拍数と酸素飽和度が安定するのか。いろいろと試しながら実践すれば自分にとって最適な呼吸法が見つかります。心臓を守ることにつながりますし、体に突然の負担がかかった際にも身を守る余力を与えてくれます。

パルスオキシメーターで血中の酸素飽和度を測っているイラスト
画像=iStock.com/Alkov
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