婚活を辞めることで得たもの

セラピストの仕事をするなかで、結婚し、子どもを持つ方の話を聞く機会も多い。改めて、日本人女性は自己犠牲の精神が強いと感じたそうだ。自分の時間や体力、精神力をすべて家族・家庭のために費やしている方は、あまりにも多いように思う。

自分が本当に何をやりたいのか? どういう風に生きたいのか? 何が悲しくて、うれしいのか? 配偶者や子どもと同じ生活をすることで、忘れてしまう人は多いのではないかとKさんは言う。家族の在り方や家庭に自分を順応させることができず、精神的な病気になってしまう人も今までたくさん見てきた。

今、自分ひとりの空間を持てている。飼育している猫2匹と自由な生活ができている。これからやりたいこと、好きなことを考える時間もお金も自分のために使える。

以前は、結婚するべきだと考えていた時期もあったが、結婚のための活動を辞めることで、精神的に楽になれた。自由気ままにすべてを楽しめる今の生活は、どうしても人に合わせてしまうKさんにとっての本当の幸せなのかもしれない。

結婚しないことへの覚悟

女性の幸せは、結婚して家庭に入り、子どもを産み育てること」と考える時代はとうに終わった。結婚は幸福に導くための手段にはなるが、結婚そのものが自分を幸せにするわけではない。結婚や出産、働き方などの考え方や価値観が変容し続けるなかで、「一体、自分にとっての幸せは何なのか?」「どんなことを大切にして生きていきたいのか?」を考え続けなければならない。

Kさんにとっての幸せは、結婚という形には当てはまらなかった。結婚し子育てをしている周囲の人との会話の内容に困ることも、家族や親戚から結婚へのプレッシャーをかけられたこともあった。結婚することと同じくらい、結婚しないことにもそれなりの覚悟がいる。ひとりで生きていくことが、それなりの不安も伴うだろう。それでも、周囲に惑わされることなく、自分にとって本当に何が大切なのかが明確になり、自分らしく生きていけるのは、紛れもなく幸せのひとつの形なのだと思う。

あたそ
文筆家

普段は会社員。たまにインターネット上であれこれ文章を書いたりトークイベントを開いたりしている。好きな飲みものは酒。著書に『女を忘れるといいぞ』(KADOKAWA)『孤独も板につきまして 気ままで上々、「ソロ」な日々』(大和出版)など。