新しいファンの前で「いいところを見せたい」

【トモヤ】大谷は肘のリハビリで、24年は打者に専念する。野球選手の最盛期と言われる29、30歳のシーズンということもあって、今年は打撃で自身最高の成績を残せると思う?

【ディラン】分からないな。移籍したことで、これまで対戦したことのない投手を相手にする場面も増えるから。でも、大谷は毎年のように、何らかの成長を見せてきた。投手として大きく飛躍した年もあれば、打者として大きく飛躍した年もある。

今年は打者に専念するということで、自己最高の成績を残すこともあり得ると思う。シーズン中盤くらいに調子が上がって大活躍する期間があるんじゃないかな。でも開幕後はスロースタートでも驚かない。怪我から復帰して、しかも新しいリーグに慣れるまでの時間があるから。これまで以上の成績になるかは分からないけど、これまでと変わらない活躍はすると思う。

【サム】25年に投手として復帰しようとリハビリをしているわけだから、打撃以外にもやらなきゃいけないことや考えることは多い。

それに、昨年の打撃が素晴らしすぎたから、それ以上の数字を叩き出すというのは、かなり難しいと思う。OPS+が184(メジャー1位)って、平均的な打者の2倍近くの打撃力ってことだよ。シーズンを通して健康な状態でいられれば、50本塁打に到達できるのか楽しみだね。23年も脇腹を怪我するまでは、そのペースだったし。無理してでも試合に出場し続けようとしていた理由の一つだったと思う。

【トモヤ】ロサンゼルス・タイムズによるオンラインのアンケートでは、85パーセントが大谷の大型契約を好意的に見ている。(現地記者に成績予想をさせる)日本の記者っぽい質問になるけど、これだけ高い期待に応えるには、最悪でもどれくらいの成績を残す必要があると思う?

【サム】ロサンゼルス・タイムズは信頼できないからな(笑)。冗談、冗談。確かに日本の記者がする質問だね。ホームラン40本は打ちたいところ。ドジャースはMVP級やオールスター級の打者が揃っているから打点は増えると思う。メジャーリーグとトリプルA(二軍)の間くらいのエンゼルス打線とは違う。

ロサンゼルス・ドジャース野球場
写真=iStock.com/Laser1987
※写真はイメージです
ディラン・ヘルナンデス、サム・ブラム、志村朋哉『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)
ディラン・ヘルナンデス、サム・ブラム、志村朋哉『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)

ドジャースでは、大谷の前に誰かが出塁する可能性は高くなる。それに投手は大谷との勝負を避けづらくなる。後ろに強打者のフレディー・フリーマンやウィル・スミスが続くだろうからね。だから、もし怪我をせずに終えたら、40本塁打、120打点は期待できる。OPSは1.000くらいかな。かなり高い基準だけど、大谷はそれくらいすごい打者ってことだよ。新しいファンの前で、いいところを見せたいっていうモチベーションもあるだろうし。

気になるのは盗塁数がどうなるのか。特に23年は、エンゼルスは大谷に盗塁をしてほしくなさそうだった。怪我につながるから。ドジャースがどういう方針かは分からないけど、25〜30くらいに盗塁数を増やせるかには注目している。

ディラン・ヘルナンデス(Dylan Hernández)
スポーツコラムニスト

1980年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校卒。ドジャースとエンゼルスの地元紙ロサンゼルス・タイムズでスポーツコラムニストを務める。それ以前はサンノゼ・マーキュリー・ニュースに勤務。日本人の母を持ち、スペイン語と日本語も流暢に話す。

サム・ブラム(Sam Blum)
ジャーナリスト

1993年生まれ。シラキュース大学卒。2021年からスポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』のエンゼルス担当記者を務める。それ以前は、ダラス・モーニング・ニュース、デイリープログレス、トロイ・レコードでスポーツ記者として勤務。AP通信スポーツ編集者賞やナショナルヘッドライナー賞を受賞。

志村 朋哉(しむら・ともや)
ジャーナリスト

1982年生まれ。国際基督教大学卒。テネシー大学スポーツ学修士課程修了。英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。米地方紙オレンジ・カウンティ・レジスターとデイリープレスで10年間働き、現地の調査報道賞も受賞した。大谷翔平のメジャーリーグ移籍後は、米メディアで唯一の大谷担当記者を務めていた。著書に『ルポ 大谷翔平 日本メディアが知らない「リアル二刀流」の真実』、共著に『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(共に朝日新書)がある。